亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

利上げ継続観測の押し目は買い

2023年05月15日 22時19分20秒 | 金市場

先週末12日のNY金は前日終値とほぼ同じ水準の2019.80ドルで終了。NY時間外のアジア午後からロンドンの午前(NY早朝)にかけて水準を切り下げながら相場は進行し、一時 2005.70ドルまで売られ、これがこの日の安値になるとともに、週間ベースでも安値となった。

FRBのボウマン理事がECB(欧州中銀)のイベントで講演し、その内容が要約すると依然として物価上昇圧力が強く、こうした状況が続けば追加的な引き締めが適切というものだった。

「直近の消費者物価指数(CPI)や雇用統計は、インフレが減速基調にあることの継続的な根拠を示していない」とした。「われわれの政策スタンスは今や制約的だが、インフレを押し下げるのに十分制約的かは依然として不確かだ」とも発言した。内容的には、利上げの打ち止めは現時点で支持はしていないというもの。この発言に反応してドル指数も米長期金利も上昇傾向にあったので、NY金は売られた。

ただし、12日NYの通常取引入り後は流れは変わった。

買い優勢の流れに転じると急速に水準を切り上げることに。そのまま前日比プラス圏に入ると一時2027.80ドルまで買われ、これが結果的にこの日の高値となった。連邦債務上限引き上げ問題のこう着が手掛かり材料となり買い上げられたものの、午前10時に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数の中の期待インフレ率の上昇で再び流れは変わることに。

発表された消費者調査による物価見通しで、5年先の予想インフレ率が3.2%と予想外に加速し、2011年以来12年ぶりの高水準に達したことが判明。期待インフレ率の推移はFRBが注視していることで知られる。

市場では利上げ休止の観測が後退し、先行したボウマン発言もあり6月の追加利上げが再び意識されることになった。為替市場でドルが主要通貨に対し上昇する中で、再び売り優勢に転じた金市場は下値追いに転じることに。ただし、序盤に見られた米債務上限問題に対する警戒感からの買いも根強く押し目は2015ドル前後と浅かった。

終盤には買い戻しの動きもあり、前日の終値水準に収れんして取引を終了ということに。上値突破のモメンタムは一巡しているのは確かだが、心理的節目の2000ドル超は維持した状況にある。

 

一方で同じ12日の米東部時間で株式市場はじめ週末の取引を終了した後の時間帯にカリフォルニア州(スタンフォード大学)。パネルに登壇したジェファーソンFRB理事は、今年のインフレ動向は「まちまち」として、政策が経済に浸透するには時間を要するとの見解を示した。「われわれの急速な引き締めの十分な効果は依然としてこれから表れる公算が大きい」としている。

また、同じイベントに参加したセントルイス連銀のブラード総裁は、政策当局が利上げを終了する局面に近づいている可能性を示唆した。タカ派で知られる同総裁だが、「金融政策は現在、恐らく十分に景気抑制的な水準の下端にある」との見解を示した。

ボウマン理事と比較し、両者の発言内容はハト派的ではあるが、市場で織り込みが進んでいる年内の利上げ見通しには否定的と思われる。

 

FRB内部で未だ利上げ休止に関し見方は温度差があるものの、引いて見れば利上げサイクルは終了に向かって進んでいるのは間違いなかろう。知上げ継続観測から売られる局面は、押し目買いの好機と思われる。

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