亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

レンジブレイクのNY金 今夜は独壇場?

2021年11月11日 20時27分20秒 | 金市場

NY金はやっと7月29日の終値1835.80ドルを上抜き、終値(清算値)は1848.30ドルとなり、いわゆるレンジブレイクで5カ月ぶりの高値となった。先週5日の金曜日のラジオNIKKEI「マーケット・プレス」(前場)で触れたが、米系ファンドの中にインフレ対応のポジションを組んでいると思われるところが増えている印象で、きっかけ待ちという感じだった。繰り返しになるが、11月3日のFOMC記者会見質疑応答でのインフレ見通しに時間軸を掲げたパウエル発言は、金の動きを変えたと思う。

ここまで、「インフレに強い金」は、年初からここまで、インフレ懸念が高まるたびに売られてきた経緯がある。それは想定を超える持続的なインフレ高進が予見される場合に、インフレ抑制に向けFRBが取るとみられる積極的な利上げ策が、金価格の売り要因になるとの判断が市場で働いてきたことによる。メディアが「利上げ前倒し観測が高まった」等々の表現で流してきたのがそれだ。もっとも、その判断はロボットのプログラムによるものとみられるが。。。いずれにしても、インフレに強い金がインフレ懸念の高まりで売られるという、投資家には何ともわかりにくい展開が続いてきた。

しかし11月3日のパウエル発言は、こうした流れを変えると見られたし、実際に変えている。というのもFRBは遅くとも22年7~9月にはインフレは落ち着くと判断し、インフレ抑制の利上げは必要ないとしたからだ。インフレの高止まりや高進を示すデータにもFRBは忍耐強く静観すると公言したに等しく、ならば金はインフレ懸念の高まりに対し、教科書的な反応(上昇)を示す機会が増えるというシグナルと当方は受け止めた。

 

10日の動きを振り返るなら、この日も米長期金利の動きが注目された。前日は10月の米生産者物価指数(PPI)の記録的な上昇にも関わらず低下した米長期金利だったが、10日は発表された10月の米消費者物価指数(CPI、Consumer Price Index)の結果に、さすがに債券は売られ利回りは上昇ということになった。

既に報じられているように、CPIは前年同月比6.2%上昇と、1990年11月以来31年ぶりの大幅な伸びを記録。ガソリンや食品価格が上昇する中、伸びは前月の5.4%上昇から加速。高めの市場予想の5.8%上昇も上回った。トレンドを見る上で注目される前月比も0.9%上昇と9月の0.4%上昇から加速していた。

変動の大きい食品とエネルギーを除いた「コア指数(コアCPI)」も前年同月比では4.6%上昇と、91年8月以来の大幅な伸びとなった。4%台は2カ月連続となる。「平均して2%を超える水準」を目標に掲げるFRBの忍耐はどこまで続くのか・・・・、という印象の結果といえる。もちろんこうした状況を予見した上での、遅くとも22年7~9月期には沈静化というのが、先週のFOMCに際してのパウエル発言だった。

しかし、この結果に市場は、再びFRBが利上げ開始時期を当初の想定より早めるのではとの憶測を呼ぶことになった。今月から始まるテーパリングにあたっての1カ月の減額規模を増やすとの見立ても浮上している(ないと思う)。この日は30年債の入札が思わしくなかったこともあるが、10年債利回りは前日の1.441%から一時1.577%まで上昇した。1870.60ドルまで買われていた金だが、さすがに売り優勢に転じ、終盤に向けて上げ幅を削ることになった。結局、通常取引終値は1850を上まわれなかったが、その後の時間外取引は1851.60ドルで終了となった。通常取引の引値ベースでの1850ドル超えも、テクニカル上注目度は高い。

 

ここから欧米はクリスマス消費が高まる時間帯に入る。すでにゲーム機など一部の商品で欠品が伝えられており、そうした報道が熱を帯びるほどに一般消費者のインフレ心理も高まるだろう。インフレ見通しの水準が上がってしまい、定着することをFRBも警戒しているものと思う。

都合よく本日はベテランズデー(退役軍人の日)で、米債券市場は休みとなる。上値抑えの役者が居ない間に、さらにひと暴れとなるか否か。なりそうに思うが、どうなるか。ドルインデックスの上昇(ユーロ安)が阻害要因ではある。。

 

以下は別サイトに寄稿した原稿 本日と同様の内容

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