主要指標の発表のない中で、来週に控える連邦公開市場委員会(FOMC)の手掛かりになりそうなものは雇用関連の指標ということになる。今週はオーストラリア準備銀行、カナダ銀行(いずれも中央銀行)がサプライズの利上げを行った。先行して利上げを見送っていた中銀でもあったので、今回の会合では利上げ見送り方針を打ち出しているFRBだが、7月会合にて改めて0.25%の追加利上げの可能性を思わせた。
ただNY金は売られたものの1950ドル割れを試すほどの売り圧力は見られない。8日は反発して前日比20.20ドル高の1978.60ドルで終了。
5月16日に2000ドルを割れて以降、終値ベースで1950ドルを割れたのはわずか2営業日。1カ月半にわたり2000ドル超を維持して調整局面入りした相場ではあるが、そもそも特定のイベントに反応して上昇が加速した上での2000ドル超ではなかったことが、押し目を浅くしている。先日も書いたが、因縁玉とも呼ばれるが“しこり” がない。日柄調整という形で次の機会(上昇トレンド)に移行できればベストという印象。
この日米労働省が発表した6月3日までの1週間の新規失業保険申請件数は、前週比2万8000件増の26万1000件と2021年10月以来の高水準に増加した。市場予想は23万5000件となっていた。前週からの増加幅も21年7月以来の大きさとなった。昨年来、大手ハイテク企業から金融界まで幅広く人員整理計画が公表されていたが、いよいよ実際の雇用削減につながり始めた印象の結果となった。
こうした観点で記憶に新しいのは、6月2日に発表された5月の米雇用統計にて失業率が4月の3.4%から3.7%に跳ね上がったこと。前月比0.3%ポイントの伸びは20年4月以来、すなわち新型コロナウイルス禍が始まった直後に記録的に上昇した時期に次ぐ大きさとなった。失業者数は5月に前月比44万人増加となった。
また週平均労働時間も34.3時間に低下し、やはり20年4月以来の低水準となっていた。景気が弱まり始めると、雇用主は人員を削減するよりまず労働時間を減らす傾向があるとされ注目された。
3月のFOMCでは参加者の予想中央値で年末までに失業率は4.5%になっているが、その水準に達する可能性は高くなっている。失業率の予想を超える低位安定が続いて来たが、上放れという状況を表したものか否か秋口にかけての動向が注視される。いずれにしても来週のFOMCでは、5月失業率の変化率の大きさをどう解釈するかが議論されそうだ。
合わせて今回のFOMCでは参加者の予想値が発表されることから、年末時点での失業率がどうなるか。年末の金利水準の予想と併せて注目したい。
金利水準に関して3月は直前に銀行破綻が起きた関係で23年末の政策金利予想値の中央値は5.125%と昨年末12月時点と変化は見られなかった。5月会合の0.25%の利上げで、政策金利は5.00~5.25%とこの水準を上回っており、市場は利上げの有無とともに見通しをどう示すかに関心を寄せている。
本日はIMF(国際通貨基金)が引き締めスタンスを維持すべきと各国に声がけしているが、米国の利上げサイクルも延長戦入りが濃厚とされるものの、それでも終盤に差し掛かっているのは間違いないだろう。 FOMC後のパウエル議長のコメント次第で、NY金の値動きは大きくなりそうだ。