先週末の5月の米雇用統計。失業率は3.8%、(非農業部門)就業者数が、前月比22万3000人増というヘッドラインを見て、まず労働参加率は、どうなったのかということを思った。失業率4.5%は、ほぼ完全雇用とFRBが言い始めて久しい。失業率が4%を下回っても、まだこんなに就業者が増えるんだという印象の結果といえる。就業者数の増加の市場予想は18万8000人。自分の知る範囲でJPモルガンの25万人増予想が、最初見た時に強気だなぁと思ったが、その強気予想が正しかったことになる。背景は、天候要因としていた。冬期の悪天候での下振れは、よく見られるが、好天でのここまでの上振れは珍しくないか。
いずれにしても、失業率は3.8%と2004年4月以来、約18年ぶりの低水準。この水準は米連邦準備理事会(FRB)が年末までに達成すると見通しを示していた水準でもある。前倒しに達成されたことになる。働くことが出来る人々(労働人口)に占める(求職者を含む)働き手の割合を示すのが労働参加率だが、62.7%と、4月の62.8%から低下していた。3ヵ月連続のマイナスとなる。失業率低下の背景に、職探しをあきらめた人がいることは確かだろう。
市場が注目していたのは、この失業率や就業者数の増加幅よりも、インフレ率加速の観点から平均時給の伸びだった。結果は、前月から0.3%増(+8セント)。4月は0.1%増だった。前年同月比では2.7%増と、やはり4月の2.6%増からは上昇。しかし、“底堅い” という程度の印象で失業率や就業者の“上振れ”比べて勢いを欠いているのは否めない。やはり、足元でインフレの加速は認められない。これは何人かの米地区連銀の総裁の指摘通りといえる。
しかし、今回の雇用統計は来週6月12-13日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)に向けての、いわば最後の“詰め”に当たるもの。0.25%の追加利上げは、確実視されているものの、市場はその先の判断を先読みしようとする。すでに年内あと2回でなく、3回を前のめりの織り込み、1300ドル割れに至っている金市場にとって、総じて今回の結果は“やはり”というものだろうか。
いやいや、FOMC参加者をして利上げの加速に踏み切らせるには、材料不足とうのが当方の見立て。仮に年内あと3回となったとしても、それは来年の利上げ分を前倒しし、上げられる時に上げ、将来の利下げ余地を作るという作業だろう。
@新大阪17時15分発、新宮行きのくろしお21号の車内。いま海南。