週末、月末さらに四半期末が重なった6月30日のNY金は、4営業日ぶりの反発となった。
朝方発表の米経済指標がインフレ鈍化の兆しをみせたと受け止められた。
5月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比、前月比ともに伸びが鈍化。上昇率は前年同月比3.8%と、前月(4.3%)から伸びが鈍化し2021年4月以降で最小となった。FRBが注目する変動の大きいエネルギーと食品を除くコア指数(PCEコアデフレーター)の伸び率も同4.6%と、前月と市場予想(ともに4.7%)を下回った。
一方、借り入れコストが上昇する中、自動車など耐久財への消費が抑制され、5月の個人消費は停滞。4~6月期の経済成長の勢いが失われていることが示唆された。
つまり前日までの、強気の米経済の見通しは後退し米連邦準備理事会(FRB)による過度な利上げ観測が後退した。
米10年債利回りが一時急低下し、ドルも主要通貨に対して売られドル指数(DXY)は3日ぶりに反落した。その中でNYコメックスの通常取引は前日比11.50ドル高の1929.40ドルで終了した。月間では6月は52.70ドル、2.66%、四半期でも56.80ドル、2.86%の下げとなった。
パウエルFRB議長は先週参加した欧州中銀(ECB)の討論会で、前々週の議会証言よりも、タカ派色を強めた。労働市場のひっ迫が緩和する兆候が見られず、GDP統計が示した個人消費も強く住宅市場も底入れを思わせる中、景気後退予想は先送りされつつある。
議長はインフレが目標値である2%を回復するのは25年になるとの見方を示し、長期にわたり金融引き締めが必要との考えを明らかにした。この発言の翌日に1-3月期GDP確報値や週次の新規失業保険申請件数が改善したことから、NY金はいったんは1900ドル割れを試したものの維持していた。
先週末にも似たことを書いたが、金市場を取り巻く環境は逆風そのもので、市場内センチメントは冷えている。
先週末米政府機関CFTC(商品先物取引委員会)が発表した投資主体別ポジション(建玉)動向では、ファンド(投機筋)の6月27日時点での買い越しは、直近ピークの5月9日から重量換算で223トン、率にして32%の減少となっている。センチメントは冷えているとはいえ、先行きの見通しを悲観的に見ているならば、経験則からは半分以下に落ち込むので、先行きには一定の強気の見通しが維持されているといえる。