亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

約300トンの売りをこなし1700ドル

2021年03月10日 22時20分08秒 | 金市場
昨日の9日のNY金は、1670ドル台でアジア時間の取引を開始し、ロンドンの早朝にかけて1680ドル台を横ばいで推移。ロンドンの午前に買い優勢の流れに転じ、NYの早朝には1700ドル台を回復。その後も水準を維持してNYの午前には1720ドルに接近するところまで買われた。終盤に向けても買い意欲は続き、水準を維持し通常取引は1716.90ドルで終了。結果的に年始1月4日以来の上げ幅となる前日比では38.90ドル高終了ということに。米長期金利が、この日行われた580憶ドルの3年債入札の結果がまずまずとなったことで、上げ一服となったこと。利回り低下から、ドル指数も3カ月半ぶりの高値から落ちたことが、買い要因というのはメディアの市況報道だが、NY金先物のファンドの買い玉(ロング)の整理が、この1カ月で大きく進んでおり、市場の内部要因が改善していることもある。

具体的には、米商品先物取引委員会(CFTC)が前週末に公表したデータでは、3月2日までの1カ月間で、NY金先物市場でのファンドのネットの買い越し(ネット・ロング)は、重量換算(オプション取引を除く)で210トンもの減少となっていること。この間に価格は終値ベースで100ドルほど低下してきた。金ETFの残高減少を加えると約300トンもの売りが出たことになる。いわゆる内部要因からはロングの整理が一巡した状態といえ、反発の素地は整っている。1700ドル割れの水準では、インドや中国などアジア地域からの現物買いの増加も考えられたし、実際に入っている。ここまで様子見に回っていた向きが、売られ過ぎ感や値ごろ感から買い出動したということだろう。まずは、1750ドル前後の水準をどう固めることができるのかが、次の注目点になるが、ETFに関しては乗り換えの動きが続いており、その前に1700ドルの値固めか。

昨日の580憶ドルの3年債入札は、応募倍率が2.69倍と前月および平均値ともに上回り好調裏に終了した。先月は7年債の入札がやや不調に終ったことをきっかけに、売りが膨らみ10年債利回りの急伸を招いた経緯がある。本日は380憶ドルの10年債、明日は30年債の入札が控え、こちらがいわば本番ということになる。にわかに注目事項となったインフレだが、2月の消費者物価指数(CPI)の発表も控える。結果を受けた長期債利回りの反応を見ようと、株式市場はじめ待機状態にある。

昨日も取り上げたように市場金利の動向を受け上下動が大きくなっていたハイテク株だが、この日は大きく反発。前日には2月12日に付けた直近高値を10%以上下回り、「調整局面」入りしていたナスダック総合株指数は、前日比464ポイント、3.69%の大幅反発で終了。米EV大手テスラが20%高など、特定銘柄が指数を大きく押し上げたとみられる。ナスダックは1日の上昇率としては昨年11月4日以来の大きさとなっている。こうした派手な上下動は株価の天井圏や調整局面入りに際し現れることも多いことから、当面落ち着くことはなさそうだが、どうなるか。復元力の強さが、米国株の魅力となっており、“押し目買い成功体験”の積み重ねが、気が付けば想定外の高みに押し上げられていたといったところか。

興味深いのは、続伸となったダウ30種。前日同様の軌跡をたどることになった。取引時間中に一時347ドル高と過去最高値を更新したものの、終盤には上げ幅を削り30ドル高の31832ドルで終了。前日は一時651ドル高まで見て306ドル高で終了。言うまでもなく上値に売りが控えることを意味する。CPIと10年債入札。それを受けた市場の反応をみるということで、相場のことは相場に聞け・・・という流れ。

気が付けば長期債の入札動向が市場の関心事になっていること自体が、市場環境の変化を表している。それでも変わらず株は反発し、金は弱含みなのだが、いずれ次の波が押し寄せることになる。


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