米英仏を中心とするシリアへの軍事介入は、いわゆる「地政学的リスク」の範疇に入るが、こうした際の金市場の反応は、いわゆる「噂で買って事実で売る」と表現されるもの。不穏な空気の下で事前に上昇したものが、結果の発生で材料出尽くし状態となり下げに転じることが多いのは経験則の教えるところであって、いまさら指摘するまでもない。今回の場合の「結果」とは、さしずめ安保理の決議なく「シリア国内への攻撃開始」ということになる。
今回の事例がやや特殊なのは、直前までシリア情勢とは一定の距離を置いていたオバマ政権が急に動きを強めるという展開につき、金市場は「シリア攻撃」を予想だにしておらず、織り込んでいなかったこと。シリア情勢が価格に影響を与えたのは今週に入ってからのこと。したがって節目の1400ドル突破の足掛かりにはなったのは間違いなかろう。
難しいのは介入目的が化学兵器の使用に対する“責任を取らせる” ことであって、使用をできなくすることだろうが、シリアの現政権の交代を目指したものではないとしていること。軍事介入の達成の目標をどこに置いているのかが分かりにくい。何をもって介入目的の達成とするのか。そもそもトマホーク(巡航ミサイル)を打ち込み軍の拠点のいくつかを破壊して、それでシリア情勢がどうなるというのだろうか。イランへの牽制との指摘もあるが、どの程度まで牽制するのか?
事態の先行きは読みにくく市場への影響は見極めにくい。結局、行動したことの結果に対する相手方の反応と広がりを見ながら、市場はその都度シナリオを描きながら反応ということか。これまでの地政学的リスクとは一線を画すような内容は、そのまま米国のプレゼンスの低下を示しているように思える。