亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

移ろいやすきかな。ファンドの買い戻しで反発

2013年01月30日 12時08分06秒 | 金市場

本日は、いつもの解説記事を特にここにも掲載しておきましょう。

4日続落の後を受けた1月29日のNY市場の金価格は反発となった。NYコメックスの先物価格は前日比7.90ドル高い1660.80ドルで通常の取引を終了した。2週間ぶりの上昇幅となるが、新規資金の流入というわけではなく、ファンドのよる空売りの買戻しすなわちショート・カバーによる上昇と見られる。すなわち、このところの下げをもたらしたのはファンドのショートで、反発はその買戻し(カバー)と見られる。

29日から米国ではFOMC(連邦公開市場委員会)が始まったが、今月から国債の買い付け450億ドル(約4兆円)が加わり従来からの住宅担保ローンの買い付けと合わせて総額850億ドルの資産購入(市場への資金供給)が始まっているが、この政策に変更は考えられないことから金市場では買戻しが先行した。

ここまで金市場が弱含みに推移してきたのは、月初に発表された前回12月のFOMC議事録の内容によるが、価格を左右しているのは景気の実態データよりも多分に“市場心理(センチメント)”の“振れ”が大きいといえる。しかもその“市場心理”とはファンドの動向であり、ファンド自体がコンピュータープログラミングに支配されており、市場で発生する動きの相互作用性に着目してのモノゆえにそれを“市場参加者の総意(市場センチメント)” というのも難がある。歪められた市場センチメントと表現すると言い過ぎだろうが、大きな流れとは別の存在ともいえよう。

この点は米国債市場も似たような背景があって、このところの株価の堅調ぶりは言うまでもないが、景気回復を先取りする株高となると流れに乗り遅れまいと米国債を売り株式市場に資金が移動、その結果として(売られる)米国債は値下がりし、金利は上昇、ついに長期金利(10年債金利)は2%を突破したと伝えられている。こうした流れのあることは否定しないが、米国債の金利上昇の実態には、下げを見込んだ空売りすなわちショートが膨らんでおり、直近では2011年7月5日以来の規模となっていることも指摘できる。つまり景気実態を映したものとは別の“思惑”という要素がある。景気実態という面では、29日発表された1月の米消費者信頼感指数が大幅悪化していたことに注目すべきだろう。昨夜のNY株は、前月比で2011年8月以来最大の悪化を示したこの指数を無視した形で上昇しているのだが。

ちなみに2011年7月から8月は、(足元でも話題だが)連邦債務の上限引き上げ問題の膠着で米国金融市場では緊張が高まっていた折でもあり、先ほどの米国債に関連しては、下げに賭けるファンドの取引が高まっていた。結局、その後に米国債は格下げされ、このポジションは大きな利益を上げたが、それ以来のショートの規模ということ。消費者信頼感指数はこの8月に前月比で大きく悪化した経緯がある。

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