3月23日のNY金は続伸となった。前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.25%の利上げを決めたものの、米国内での中堅銀行の破綻をきっかけにした中小金融機関の経営不安が意識され、利上げの早期打ち止め観測が急浮上し、金は買われた。
前日の通常取引終了後の時間外取引で、FOMCメンバーによる経済予測にて23年末の金利水準が前回12月会合と同じ5.1%(中央値)になったことや、パウエル議長の発言内容を受け、NY金は1970ドル台に水準を切り上げていた。
23日は前日の堅調地合いをそのまま受け継ぐ形でアジア時間から買いが先行した。派手さはなく静かに水準を切り上げアジア午後からロンドンの早朝には1980ドル台に。NYの通常取引開始後に少しまとまった売りに1970ドル割れを試したものの、売りが一巡すると切り返しも早く、むしろ騰勢を強め上値追いに転じた。そのままアジアの午後に付けていた高値を抜くと午後に入り1990ドルを突破。終盤まで水準を維持して通常取引は終了した。前日比46.30ドル高の1995.90ドルが終値だった。22年3月10日以来、約1年ぶりの高値水準となる。
静かな買いの流れは続き、時間外取引が始まった30分後には、20日に続き再び2000ドルの大台を突破。一時は2006.10ドルまで付け、これが高値となった。さすがにこの水準では売りも見られ10ドルほど急落するなど不安定化。それでも終盤は2000ドル手前の水準を横ばいで推移し時間外取引は1996.10ドルで終了した。
2000ドル突破を想定したのは、今回のFOMCにてターミナルレートに関する不透明感が払しょくされ、いわゆる材料出尽くしを想定していたことによる。
実は、22日にテレビ東京早朝の市況番組「モーニングサテライト」にて昨年来のNY金の推移を語り、今年2月にかけての300ドル上昇の背景説明として中央銀行の大量買いを挙げた。終了後のテレ東会員向けネット配信放送にて、FOMCにてターミナルレートの不透明感が後退すると、上昇しやすくなり2000ドル突破から上半期に過去最高値更新を見込むという話をさせてもらった。
もちろんこれには、今後想定する材料の浮上が必要だが、いずれも地政学的要因となる。
それはウクライナ戦におけるロシアの出方。もう一つは、米連邦債務引き上げ問題。さらに、足元の信用リスクの上昇となる。
ウクライナや米債務問題は今後の当事者の対応次第で流れが変わる。信用リスクももちろん当局の対応次第だが、すでに問題の種は撒かれており、それが水面下でどの程度のものに育っているか(悪化しているか)に掛かっている。
基本的にはFRBがインフレ対応の利下げに専念できない状況に追いやられたとみられるが、この先利上げしなくとも金融は引き締まるとみられるので、状況としては現時点でいわゆる「スタグフレーション」入りが濃厚とみられる。それはゴールドにとっては強力な押し上げ要因となる。しかし、我々の生活には、いい環境といえない。数カ月先の話ではあるが。