本日は5月の米雇用統計だが、今週発表された4月の雇用動態調査(JOLTS)などから、パウエルFRB議長が指摘したように米雇用市場は完全雇用の過熱市場となっていることから、多少下振れがあってもサプライズはないと思われる。
昨日のADP全米民間雇用が先行指標として信頼度が高いわけではないが、5月末にかけて発表されたNY連銀はじめ製造業景況指数が軒並み予想外の低下を示していたこともあり、下振れも想定内といえる。市場予想は非農業部門雇用者数(NFP)は前月比35万人増となっている。 しかし、求人件数が1140万件もある中で10万人台の増加でも問題はなく、今回は失業率がどうなるか。市場予想は3.5%とコロナ前の50年ぶりの低水準に並ぶ予想となっている。仮に労働参加率が伸び悩みか下がって低下すると、前日とは逆に市場はFRBのタカ派路線を警戒することになりそうだ。
2日はすでに報じられているようにブレイナードFRB副議長の経済チャンネルCNBCのインタビュー内容が注目された。6月と7月に0.5%の利上げを実施するのは極めて合理的な道筋とした上で「9月に利上げをいったん停止する理由はほとんどない」とした。さらに、「インフレ率を目標の2%に引き下げるために、なすべきことはまだ多く残っている」と発言。すでに引き締め効果は、住宅ローン金利の上昇などに表れているとしつつ、インフレがピークを越えたかどうかは判断できないという見方を示した。
注目すべきは、「需要が冷めないようなら、(9月も)同じペースで利上げを進めることが適切になるかもしれない」としたこと。そもそも引き締め策自体の目的はそうだが、冷えないのであれば意図的に冷やそうということ。さらに、量的引き締め(QT)は「バランスシートを圧縮していく過程で、2~3回分の利上げに相当する効果を生む」とも発言している。かなり強めの発言だが、株式市場は無視した形になった。もうパンチボールは片付けられているのに、まだ酔いが続いているようだ。。。
さらにこの日、フィラデルフィアの経済団体向けに講演したクリーブランド連銀のメスター総裁の発言も要注目の内容だった。
このところの各メンバー定番の次の2回の会合で0.5%の利上げを実施する必要があるとした上で、その後は状況を見極める必要があるとした。ここまでは変わりはない。
興味深いのは、(約40年ぶりといえる)強めの引き締め策が、家計は企業にとり「痛み」を伴う可能性があるとしたこと。このところのパウエル議長も「痛み」に言及し始めているが、いよいよ認め始めたのがポイントと思う。その上で、足元の高水準のインフレで「購買力が目減りし経済の勢いが弱まる方が望ましくない」としたこと。この痛みは、放置すればさらに大きな痛みを制御するために必要というわけだ。その通りと思う。問題は株式市場などが、それをどこまで認識しているかという点にある。
メスター発言の極めつけは、その「痛み」について、「金融情勢が一段と引き締まる中、金融市場は極めて不安定な状態が続く可能性がある。経済成長率は数四半期にわたり予想よりも鈍化し、失業率は一時的に長期推計値を上回る可能性がある」と具体的に挙げたこと。そこまで想定した上でインフレを抑えにかかると。
今夜は雇用統計の発表なので、関連した発言を挙げるなら、今回の引き締め過程で「失業率を4.25%に抑えることができれば、それは見事なパフォーマンスだと思う」というものもある。 引き締め過程で労働市場が冷え失業率が上がっても4.25%以下であれば上出来というもの。発言の主はウォラーFRB理事。