5月21日のNY金は3営業日ぶりに反落した。通常取引は前日比12.60ドル安の2425.90ドルで終了した。
前日に取引時間中および終値ベースでの史上最高値を更新しただけに、高値警戒感とともに利益確定売りに下押すことになった。
一方で、押し目買い意欲も強く、反落とはいえ下げ幅は限定的な印象が強いと言える。
売り圧力が高まったのはアジア時間で、日本時間の昼前には一時2408.50ドルまで売られた。一般的には史上最高値圏での高値警戒感もあり2400ドル割れを試すかと思いきやそこから反転。NY時間には週初から続く連邦準備理事会(FRB)高官による利下げ慎重発言があるにもかかわらず、2430ドル前後での取引が続いた。
21日も前日同様に主要な米経済指標の発表のない中で、複数の米連邦準備理事会(FRB)高官の講演やメディアインタビューに注目が集まった。
来月6月11~12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されているが、参加メンバー全員(19名)による金利見通しなど経済予想の分布と中央値が公開される、いわば節目の会合となる。そのFOMCを前に6月に入るとすぐにFRB関係者の発言自粛期間(ブラックアウト)に入ることから、今来週に発言が集中している。
昨日の発言者の中で最も注目度が高かったのがモラーFRB理事だった。
昨年来、政策方針や金利の見通しを巡り語った内容が、その後実現する頻度が高く、市場では一目置かれる存在となってきた。一方で、利下げ期待が常に先行しがちだった市場からは、タカ派論者として見られてきた経緯がある。
21日は午前9時から講演があり、午後にはメディアインタビューが予定されるという2本立てだった。
講演では、先週15日に発表され(加速が見られず市場に安心感を与え)た4月の消費者物価指数(CPI)について、物価圧力が加速していない兆候だと指摘。同じ日に発表され予想外の横ばいとなっていた4月の小売売上高についても、労働市場の減速を示唆する兆候だとした。
労働市場が堅調に推移していることから「(利下げ転換を)快く支持するには、もう数カ月良好なインフレデータを確認する必要がある」と述べている。その上で追加利上げは「恐らく不要だろう」と発言。
講演後のディスカッションでは、金利の次の動きは引き下げだろうとの予想を示している。
午後からの米経済専門局CNBCとのインタビューでは、「正しい方向に向かうデータが十分得られたなら、われわれは年内ないし来年初めの利下げを考えることができる」と語っている。そのためには今後数カ月間良いデータが必要とした。
次の一手は利上げではないだろうというパウエル議長の発言をサポートするような内容からは、予想していたほどにはタカ派ではなかったということに。
今週は本日の4月30日~5月1日FOMCの議事要旨より、明日のS&PグローバルのPMI(購買担当者景況観)がポイントです。