痛くないよ。僕、男の子だもん!
<里芋パスターが子どもの心を包んだ症例>
私ども歯科医院では、歯科衛生士が担当制で患者さまを診ています。ある日Y君(6歳)を担当しているS衛生士が院の裏に併設している食養塾・無何有庵に慌てた様子で飛び込んできました。目を真っ赤にし、「Y君の指が折れたかも知れない」というのです。診察が終わって診療台を起こすとき気がつかずに指を挟んだままスイッチを入れてしまったのでした。
すぐに、里芋をすりパスターを用意し待合室に行くと、神妙な顔をしたY君と心配ながらも気を使ってくださるお母さんが待っておられました。
Y君の指をそっと触ると少し固く膨らみ熱を持っています。指はなんとか曲がり折れている様子ではありませんでしたがヒビの心配もありましたので、まずお母さんに病院へ行く方が良いかどうか伺いました。「たぶん大丈夫だから、様子を見たい」とおっしゃられましたので、里芋パスターを貼ることをご了解頂き、ごま油を塗りパスターを小さな指に巻きつけました。「冷たくて気持ちいい」とY君は緊張した顔を少~し緩めて言ってくれました。「ごめんね、痛かったねぇ」と言うと「痛くないよ。僕、男の子だもん!」とにっこりしてくれました。涙が溢れてまだ足を震わせている衛生士の顔を見上げ反対に心配そうな様子でした。
S衛生士に、今晩と翌日にご連絡をし場合によっては病院に連れて行ける体制をとるよう支持し後はまかせることにしました。
S衛生士はすぐ、里芋パスターの作り方のコピーをお母さんに渡し、今晩も続けて貼り替えて頂く事をお願い致しました。そして、翌日。腫れも引き指を動かしても痛くないということを確認する事ができ、ほっとした表情で報告にきました。
何日か過ぎて、S君がお母さんと一緒に診察に来られたのでご挨拶に参りますと、すっかり元気ないつものS君が手を振って待合室で座っていました。「もう、痛くなぁい?」と聞くとにっこりと「ウン」と答えてくれました。おかあさんが、「里芋パスターが良かったみたいです。あの日、Y君はお家に帰ってもパスターで包んだ指を大事そうにしていたんですよ」とご報告くださり、パスターのお陰で翌日にはすっかり腫れがひいていたと喜んでくださいました。
無何有庵ではお手当てとして生姜シップや里芋、豆腐、青菜パスターなど外用のお手当てから梅醤番茶や蓮根湯、大根湯などの内服のお手当てのご指導もさせていただいております。初めて自然医食の世界に足を踏み入れた方は、戸惑いや不安もあり懐疑的な方もいらっしゃいますが、実際にやってみると皆さん驚きと共にその効果を実感されます。すぐに薬や医者に頼ることなく身体に負担をかけないお手当て。その字の如く、ただ手をおでこに当てるだけで安らぎと温もりが癒しへのエスコートをいたします。手のひらには気を放出する力が漲っているのです。そしてその手で作るお手当ての色々は、愛情が溢れ手当てを受ける方の治癒力を高めてくれるのです。
先日、自然医食フォーラムから出版された「マクロビオティックライフⅠ.Ⅱ.Ⅲ」は食箋からお手当てまで豊富な知識と経験が病気別にまとめられたとてもわかりやすくしかも内容の濃いものです。是非、一家にワンセット置いておきたいものです。