農繁期、農閑期という言葉は今では死語になりつつある。農繁期は田植えや稲刈りなど農業が忙しい時期で、農閑期は逆に暇な時と言ってしまえば当たり前のことだ。しかし、我が家のような水呑百姓にとってはもう一つの意味があった。農閑期は出稼ぎの季節という裏の意味だ。
私が学生時代、我が家の所得は40~50万円、今でもはっきり覚えている。とても大学にいける収入ではなかった。どこの農家も暇の時期になると日雇い労働に出かけた。そうしなければ人並みの生活ができなかった。大学は授業料の安い国立を迷わず選択した。入学後は、自給自足に近い生活で、自家米を持っていき、三食すべて自炊した。初めてのバイトで買ったものは炊飯器と小型冷蔵庫。でも楽しかった。
大学では、授業料免除という制度があった。判定基準は成績より先ずは所得。全額免除、半額免除があり、私の場合、半額くらいのは何とかいけそうだった。
そこで両親に話を持ちかけたが結果はノー。授業料くらい親が働いて出すというのだ。当時の授業料は半期4万8千円、年間で9万6千円だった。
そんな事もあったが、私は4年間で無事大学を卒業することができた。今でも心に豊かさを与えてくれた農家育ちに感謝をしている。