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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

台湾アヒル

2009年06月26日 | 那覇、沖縄
 勤務する大学のすぐ隣には、「りゅうたん」とよばれる池がある。よく「りゅうたん池」とよばれるが、「たん=潭」は「池」の意味なので「りゅうたん」だけでいい。さて、この「りゅうたん」には野生の動物が結構住んでいるのだが、中でも普段の生活でなかなか目にしないのがアヒルである。アヒルといっても、白くて嘴の黄色いいわゆる「アヒル」ではなく、アヒルとニワトリとカモがかけあわさったような不思議なアヒル、いわゆる「台湾アヒル」である。もともと飼われていたものが、どうも「りゅうたん」で野生化したらしい。
 このアヒル、日本人はなかなか目にしないだろうが、バリの村では食用として結構飼われている。調査地で暮らしていたとき、私はこのアヒルを始めて知ったのだが、当初は家屋敷の敷地内に放し飼いになって飼われているニワトリ顔のアヒルが気味悪く思え、さらには食用のため儀礼や来客があると台所に並んだおかずの一品となっても、それがこのアヒルだとわかるとなんとなく敬遠した覚えがある。
 バリ語ではクイルKUIRという。インドネシア語では、ITIK SERATIだろうか?しかし、これまではバリ語オンリーでインドネシア語を使ったことがない。村での生活も長くなると、最初のうちは気味悪かった台湾アヒルも徐々にご馳走に見えるようになり、半年もするとこの鳥を「絞める」ことができるようになったのだった。
 さて昨日、「りゅうたん」でばったり出会った写真の台湾アヒルの群れ。正直言うと、ものすごく「おいしく」見えてしまうのである。これはたぶん美ら海水族館の水槽におよぐ魚を見ながら、「刺身にしたらうまいだろう」と考えるのと類似の発想だ。そんな舌なめずりをしながら、台湾アヒルを眺めているところに学校帰りの小学生がやってきて、楽しそうにパン屑を投げる。子どもたちにとっては自然の中で暮らす愛玩動物なのだろう。もちろん「君たち、これ、すごく美味しいんだよ」なんて言ったりしなかったが、「おいしそうだねえ」ではなく、「かわいいねえ」なんて、子どもに口からでまかせをいう私は本当に「嘘つきな大人」である。