河村諒、中里和弘 Palliat Care Res2020;15(3):175-83
介護職員への質的調査を通して、高齢者施設の宗教的関わりの臨床的意義と課題を探索的に検討することを目的としている。
「宗教的関わり」と聞き、特別な関わりと考えていたが、日本古来の習わしのことであり、日常的なイベントのことであった。
しかしこの日常的なイベントすら意識されていない介護施設も少なくないだろう。実践の振り返りとしても学び直すことができると感じた。
引用
(考察より)
・利用者面からみた宗教的な関わりの臨床的意義…参拝等の普段行っていない宗教行動、お盆やお彼岸といった時節柄の宗教行事、外出を伴う初詣等への参加は「非日常性」の要素を持つといえる。
・宗教的な関わりが死に関する場面でのポジティブな精神変化をもたらす可能性が示唆された。
・高齢者施設においても介護職員が利用者の宗教観、死生観を受容し傾聴することで介護職員への信頼感につながり、自分は大事にしてもらえるといった認識が実存的空虚感の緩和へつながる可能性が考えられる。
介護施設への入所について、自らの意思で決める人はわずかであろう。さらにコロナ禍では家族との面会もままならないため、入所した高齢者の「見捨てられた感」は、相当なものであろう。筆者らがとらえているスピリチュアルペインは、そういった立場にある高齢者にももちろんあり、それを緩和できる取り組みのひとつとして、宗教的な関わりがあると論じている。
私が勤務している特養はユニットケア型であり、居室への仏壇の持ち込みは許されている。しかしながら職員側の「渋々感」は否めない。居室移動のときに動かすのが面倒、認知がある人に必要なの?といった、施設側の理屈でである。
残念ながら、介護職員にスピリチュアルペインを意識している人は多くはないと実感している。介護職員は本当に忙しい。そんな目に見えない痛みを知ることはできないし、そんな余裕はないと言われてしまうだろう。でもあと一歩。介護のプロとしてのもう一歩先にあるものとして、見えない痛みを見出し、アプローチができる職種であって欲しいと願う。
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