nodatchのブログ

鉄道が好きな旅行作家が、取材や出版などの個人的な話を書いていきます

別冊太陽「内田百けん」

2008-08-30 09:31:44 | 作家活動
先日、世田谷文学館の「宮脇俊三展」を見てきたことは既にご報告しましたが、その展示の中で、鉄道紀行文学の系譜として内田百けん(門がまえの中に月という字ですが、パソコンで表示できませんので、ここではひらがなにします)⇒阿川弘之⇒宮脇俊三、とありましたが、これは今や定説ですね。百けん先生は、鉄道文学(彼は自著の「阿房列車」を随筆や紀行文ではなく小説としていたとか)の元祖というわけです。
 この機会に百けん先生の名著「阿房列車」を再読しようかと思っていたら、グッド・タイミングで、平凡社から「内田百けん」という大判の本が出ました。これは「別冊太陽」の1冊で、このシリーズでは既に「宮脇俊三」も出ています。

 表紙は、往年の特急「はと」の展望車に乗っている百けん先生の姿ですが、何だか気難しくておっかなそうな人です。実際も、頑固で無愛想な人だったとか。こんな人ですが、書かれた文章は軽妙洒脱な名文です。「用もないのに汽車に乗って大阪へ行ってこようと思う」という阿房列車の冒頭にもあるとおり、乗りテツの元祖です。もっとも「乗りテツ」なんていう軽薄な表現をしたらあの世から怒鳴られそうです。
 百けん先生の乗車した全国の路線図が収録されていますが、全線完乗とは程遠いです。「50を過ぎたら1等しか乗らない」とか、食堂車で酒を飲むのが好きだったから、ローカル線には興味がなかったのでしょうか。「百けん先生の愛用車両」というページもテツ向きです。
 しかし、そうしたテツ関連よりも百けん先生の生き様が興味深いです。学校の語学教師だった点には親近感を覚えましたが、ずいぶんと多趣味だったのですね。そして、何よりも「イヤダカラ、イヤダ」と言い放った言葉に集約される人生観。鉄道以外の文章に思わず引き込まれてしまいました。
 ともあれ、オススメの1冊です。裏表紙の見返しには、数ある文豪の名前の下に拙著(平凡社新書から出ている5冊)の紹介もありました!
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1 コメント

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Unknown (舞矢)
2008-09-07 01:51:32
鉄道好き、ドイツ語教師、音楽好きなど、野田先生と共通点が
たくさんありそうですね。(^^)
これを機会に読み直そうと思って、新潮文庫版とちくま文庫版を
買ったのですが、どちらも新かな使いになっていて、ガッカリです。
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