昨夜のBSプレミアムで放送された「山田洋次監督が選んだ日本の名作百本」は小津安二郎監督の「東京物語(1953)」。この作品の素晴らしさは今さら語る必要もないが、昨夜放映されたデジタル・リマスター版の、クリアで、かつ陰影に富んだ映像美は素晴らしく、また一段と価値が高まったような気がした。昨夜も話されたと思うが、山田監督が黒澤明を語る時、いつもエピソードとして話されるのが、黒澤監督が「まあだだよ」を撮る前に、自宅で一人、「東京物語」を食い入るように見ていた。という話だ。小津監督とは正反対と思っていたあの黒澤明が「東京物語」に見入る姿に、自分はとんでもない場面に遭遇しているのではないかと思った、と語っておられた。黒澤監督が「東京物語」を参考にしたと思われる、その「まあだだよ」は小説家・随筆家の内田百間を主人公にした物語だ。この内田百間は代表作の「阿房列車(あほうれっしゃ)」シリーズの取材で訪れた八代の松濱軒という宿がたいそう気に入り、都合9回も訪れているという。このあたりの話は、現在、熊本近代文学館で開かれている「鉄道と文芸展」に詳しく紹介されている。