どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

どろんこそうべえ

2018年06月12日 | 田島征三


    どろんこそうべえ/作・絵:田島 征彦/童心社/2007年

 子どもに大人気という「そうべえシリーズ」は三冊目で、関西弁の小気味よいリズムで、有無をいわせず展開します。

 そうべえが、宴会中におちていったのは、土の中。

 おけらがかずをかぞえると、だんだんわかがえり、こどもになって。おなじみの山伏のふっかい、歯科医のしかい、医者のちくあんも みーんなこどもに。おまけにすっぽんぽん。

 おけらから、みみずのかんたろうと、みみずひめの結婚式をじゃまをするかもしれない、もぐらのもぐりんをつかまえてくれとたのまれて・・。

 もぐりんをなんとかおさえると、もぐりん
  かんにん かんにん 
  みみずを たべへんと
  わて いきて いかれへん

  かんにんしたろ 
  わたいらかて やきとりも たべるし、
  たこやきかて だいすきや。
  いのちの あるもんを たべてるんや。

 土の中で楽しそうに遊びまわる四人組、なんと三か月も。
 おけらが数をかぞえると、こんどは、どんどん大きくなって。

 このへんでとめてといっても、どんどん歳をとっていくのも笑わせます。

 今回、独特の絵が、型絵染という手法であるのがわかりました。

 そうべえの妻のおさきさん、息子そうすけも初登場です。


とくべえ と おへそ

2018年05月27日 | 田島征三


     とくべえとおへそ/作・桂 文我 絵・田島 征彦/童心社/2004年


 上方落語「月宮殿星の都」よりとあります。

 大うなぎを釣り上げたのはよかったが、うなぎに釣り上げられ雲の上までのぼってしまったとくべえさん。
 そこであったのは、かつて助けたカミナリのごろぞうはん。

 ごちそうにだされたのは、虹のそうめん、どじょうのカバヤキ、あられのみぞれあえ、はるさめのしぐれ、いわしぐものしおやきと天上でしか食べられないレアもの。

 ちょうどこの日は月宮殿というお屋敷のお祭りの日。変装したカミナリの格好でいってみると、王さま、お妃さまが、カミナリが集めたおひそを蓮池に舟をうかべて食べるという。

 とくべえさん、義を見てせざるは勇無きなりとばかり、おへそを盗み出し、蓮の葉っぱの水玉に落として地上の人間に返しはじめます。

 「おへそが かえってきたあーっ」と喜ぶ声。そりゃそうですねん、おへそがないと人間、力がでませんもの。

 困ったのはコック。そこでブタのおへそを代用にすることに。

 王さま、お妃さまがおへそ料理を食べようとすると・・・。

 関西弁でテンポよく、とくべえさんとごろぞうはんの掛け合いが続いていきます。

 カミナリがおへそをあつめるのは、王さま、お妃さまの料理にするためだったとは!

 カミナリ様の世界に蓮池があるので、もしかすると、ここは極楽を模したものか?。

 祭りやカミナリがブタからおへそを集める場面など、田島さんのなんともいえない絵が楽しい。


そうべえごくらくへゆく

2018年02月27日 | 田島征三


     そうべえごくらくへゆく/作・絵:田島 征彦/童心社/1989年


 えらいこっちゃ えらいこっちゃと関西弁でテンポよく進んでいきます。子どもにも大うけで何度も読まされたという感想もあります。

 昔話にも、三人組が地獄で閻魔様をやりこめる話はありますが、地獄だけではなく極楽までいって大騒動。

 軽業師の「そうべえ」、山伏の「ふっかい」、医者の「ちくあん」の三人組、いった先はいった地獄。
 糞尿地獄に放り込まれそうになって、山伏の「ふっかい」が、うんこの池を凍らせると閻魔様まで氷にはまってしまって、三人組は極楽へ。

 極楽は地獄の目の前。

 えらいこっちゃ えらいこっちゃと極楽浄土でひと踊りしていると、阿弥陀様から極楽は静かにしているところとお目玉。

 好きなことをして遊ぼうと阿弥陀様をにおいの眠り薬で眠らせ、鳴り物入りで、そうべえ おんど。

 効くのも早いがさめるのも早い薬。目が覚めた阿弥陀様から地獄行きのご宣託。地獄行きの間まで、牢屋にはいった三人組。

 そこであったのは絵描きの「ゆきえもん」。極楽では働くこともまかりならんのに、絵をかいて、おまけに阿弥陀様を不細工にかいてしまって牢屋送り。

 「そうべえ」が縄ぬけしようとすると、何と千両箱の山。「ふっかい」がマッチ箱の大きさにしてもってかえろうとすると、千両箱が小さくなるどころか、大きくなって牢屋の壁がこわれて外へ。

 外に出てみるとそこは美しい花園。阿弥陀様が花の蜜をのみながら宴会。

 4人組は花からお酒をつくり、のみなはれのみ、のみなはれ。ぐーつとのみなはれ、気持ちよくなって花の上で踊っていると、阿弥陀さんと閻魔様までが踊りながら・・・。

 極楽に牢屋があるのは、極楽も安寧ではなさそう。さらに千両箱がどっさり積まれているのは極楽に入るための賄賂かな。地獄の沙汰も金次第ならぬ、極楽の沙汰も金次第。

 糞尿地獄。集団食中毒で、おなかをこわして しんできたものたちが、ぴちぴち ぴちぴち、ぎょうさん ひりだしましたによって、糞尿地獄は、ちょうど ぐあいように なっとります と、現代風。

 有無を言わせないテンポで小気味よいのですが、このあとどうなるの?と気をもませます。


はたけうた

2015年05月04日 | 田島征三
はたけうた  

      はたけうた/作・絵:田島 征三/福音館書店/1985年初版

 

 表紙をよくよくみると五線譜です

 大根、ニンジン、キャベツ、レタスからはじまり麦まで、野菜のオンパレード。季節感もあります。

 「はたけのうた」とあって、掛け声がリズムを感じさせます。

 はちやはなあぶは ブフン ブンブン
 なすやきゅうりの花は、花屋の花よりも チョイト
 なすやきゅうり トマトのはなにゃ チョイト

 しろいちょうちょが よくにあう チュイトナー チョイトナー
 すいかもメロンもあまくなる ホイ
 むかごの ぼんさんたち ねんぶつばかり ナンマイダー ナンマイダー
 みんなたいくつして チンチロリン チンチロリン

 なんといってもトマトが斬新です。2ページにわたるソバの花の上を飛ぶ赤とんぼの群れ、霜柱にもドッコイショとのびる麦に生命力を感じます。 

 この掛け声、多分こどもが繰り返し口にしそうです。

 地域差がありますが、都市化のなかで畑を目にする子も少ないので、絵をみながら話をすると楽しいかも。 


しらないまち

2014年07月06日 | 田島征三
しらないまち  

     しらないまち/田島征三/偕成社/2006年初版

 

 遠足の日、“ぼく“はバスにのり遅れ、すぐきたバスにのったら、そこは不思議な世界。

 タンポポの子どもたちが歩き、道端に生えているのは小鳥。
 川にはパイナップル、バナナ、マンゴーが泳ぎ、畑には牛や豚や魚が育っている…。

 動物と植物がまったく逆になっている世界

 町は野菜でできています。

 街路樹はおおきな犬。ハンバーグが売っているのは、ネコの植木。

 “ぼく“はタンポポに食べられてしまいますが、どうもまずいらしく、はきだされ、タンポポの綿毛に乗って家にかえります。

 この町では“ぼく“はとっても小さい存在。キリギリスは“ぼく“の何十倍もあります。

 常識で普通と思っていることも、視点をかえると、何かありえへんことがみえてくるのかも。   


わっはっは

2013年12月21日 | 田島征三
わっはっは  

     わっはっは/田島征三/偕成社/1994年初版

 

 特に誰ときめて絵本を読んでいるわけではないが、このところ少しずつ作者の特色?がわかってきて、開く前からワクワク感がある絵本。

 すごくシンプルですが、そういえばお腹かの底から「わっはっは」と笑うことが長い間なかったことを思い出させてくれます。

 表紙の男の子が大きな口を開けて「わっはっは」と笑っているかと思うと、裏表紙では自動車が。
 あんこう、大きなかばの笑顔
 椅子が、花が、コップが。
 そして、蜂が、カエルが
 ペリカン、キャベツ、ひまわりも笑っています。
 お母さんもおなかかかえて大笑い

 なんで笑っているのかは?です。

 辛いとき、悲しいとき、怒りを感じるとき
 笑うだけではすまないときもあるけど、時には大声で笑ってみよーっと。

 力が湧いてくるかも。                   


あめ じょあじょあ

2013年12月17日 | 田島征三
あめじょあじょあ  

    あめ じょあじょあ/イ・ミエ・文 田島征三・絵 おおたけきよみ・訳/光村教育図書/2009年初版

 

 雨のふるさまを、“じゃあじゃあ“ではなく”じょあじょあ“と表現されると何となく楽しい感じです。

 この絵本を見た方の多くが、まずこのタイトルにひかれるのがわかります。
“じゃあじゃあ“とは、雨が勢いよくふる様子をあらわす韓国の言葉という。

 雨の循環するさまが楽しく描かれています。

 みみずやかたつむり、かえるが雨の中で大喜び
 雲の中のしずくが、くっつきあっておおきなしずくになり、うかんでいられなくなったしずくが地上に落ちたのが雨。
 しずくが人間の顔をしています。
 空高くのぼる水蒸気に羽がはえていています。

 また、擬音語がたくみに使われていて、雨が落ちる様子は。
    ぽつん、ぽつん、ぽたぽたぽた
 屋根のはじっこにぶらさがっていた雨のしずくが落ちるさまは、
    ぴちり ぽろん
    ちろ ちろ ぽたり 

 山に降った雨は、川に集まり、流れ流れて海にいきつきます。
 畑の水も川の水も海の水も水蒸気になって空にのぼり雲になります。
 水はめぐりめぐる。

 子どもたちはこの絵本で、雨のことを楽しみながら理解できそう。   


ぐうぐうぐう

2013年10月11日 | 田島征三
ぐうぐうぐう  

     ぐうぐうぐう/田島 征三/偕成社/1993年初版

 

 眠る前に子どもに読んであげたい絵本。

 ぐうぐうぐう・・・
 つるも
 こうもりも
 かぼちゃも
 くじらも
 おもちゃも
 ぞうさんも
 いもむしも

 文章は“ぐうぐうぐう”だけ。

 リズムを楽しんで、ねむりにおちる子ども姿がうかびます。                     


ぼくのこえがきこえますか

2013年09月04日 | 田島征三
日・中・韓平和絵本 ぼくのこえがきこえますか  

     ぼくのこえがきこえますか/田島征三/童心社/2012年初版

だれのために ころし、
だれのために ころされるの?
なんのために しぬの?
ぼくたちの すがたは だれにも みえないけれど、
あなたに つたえたい
ひとが ひとをころす 
せんそうのこと。
あなたと おなじように いきていた
ぼくたちの こと。
ぼくのこえがきこえますか

 戦争になってからでは遅い。大人の責任が問われています。

 日本、中国、韓国の絵本作家が手をつなぎ子どもたちにおくる絵本シリーズとあって、ストレートに平和ということが伝わってきます。

 田島さんの独特な荒々しいタッチで描かれてる絵が、この本のテーマにぴったり。思わず座りなおしました。