昔話のさまざまなキャラクターも楽しみの一つです。
・モンゴルの昔話(大草原に語りつがれるモンゴルのむかし話/Ch.チメグバール監修 籾山素子 訳・再話 藤原道子 絵/PHP研究所/2009年初版)にでてくるショルマスは、脚注によると女の妖怪で、灰色の髪、きばのある大きな口をもって老婆の姿として描かれるそうである。日本語に置き換えられる適当なものがないので、そのままショルマスとされたもののようである。
「ガハイ・メルゲン・オトチ」という話では、王さまの妃としてあらわれるので、姿もかえられる存在です。
また「イフアリムとバガアリム」では、兄がショルマスにだまされて食べられてしまい、弟も飲み込まれしまいますが、弟は隠し持っていたナイフで胃袋を切り裂き、兄弟が助かります。
もうひとり、パダルチンというのは、お坊さんのようなかっこうでお椀をもち、人々から食べ物をめぐんでもらいながら、王さまや領主をとんちでやりこめます。
「道で出会ったパダルチン」では、威張り散らす領主から、「茶碗は、まるで井戸のようだ」といわれると「領主の井戸が わたしの茶碗のようなら 領主の馬はネズミみたいに小さいだろうな」と答え、「こいつのぼうしは屋根みたい」には「屋根がわたしのぼうしのようなら、領主の館は、まるでちっぽけな玉っころじゃないか」ときりかえします。ただ、正反対のことをいわれ、もっと大きなものでやりかえすのはすぐには、わかりにくいかも。
モンゴルではもうひとりマンガスというのが面白い。
・マンガスと七人のじいさん(子どもに語るモンゴルの昔話/蓮見治雄訳・再話 平田美恵子再話/こぐま社/2004年初版)では、十二の頭をもったしわくちゃの黒い化け物として登場します。
人間を食べる恐ろしい化け物であるが、他の国の登場人物同様、どこか憎めません。
このお話のなかでも七番目のおじいさんを食べようとして、あと六人のおじいさんを探すことになるが、最後には川に溺れてしまいます。