ゴハおじさんのゆかいなお話/千葉茂樹・訳/徳間書店/2010年初版
何百年もエジプトで愛され続けているというゴハじいさんの話。まぬけ、がんこで、ときにはかしこいゴハじいさんです。エジプトの職人さんの布製画という珍しい挿絵が入っていてゴハおじさんの人気のほどがうかがえます。
<ゴハおじさん、強盗にであう>
ゴハおじさんが、町はずれの道で、二人ずれの強盗にであいます。おじさんはお金を全然もっていなかったが、ないというとナイフで刺されるかもしれないと思い、お金をたんまり持っているという。そして、お金は二人のどちらかにあげたいというと、二人は大声ではげしくののしりあい、なぐったり、けったりの喧嘩になってしまいます。
ゴハじいさんはその場をそっと逃げ出します。
冷静な判断力があるゴハじいさんです。
<だんまりのゴハおじさん>
日本だけでなく多くの外国にもある類似の話です。
ロバに、どちらがえさをやるかでいいあらそったゴハおじさん夫婦。先にしゃべった方がえさをやることに。
ゴハおじさんの家に泥棒がはいりますが、ゴハおじさんは泥棒をみているだけ。泥棒がゴハおじさんのかぶっているターバンをとってもだまったまま。
泥棒と入れ替わりに入ってきたのは、おくさんから身振り手振りで頼まれたスープをもってきた、友達の息子。
ゴハおじさんは返事をしません。身振り手振りで泥棒がっ入ったことを伝えようと自分の頭をゆびさします。すると男の子は頭にスープをかけてほしいと思い込み、そのとおりにします。あついスープが顔を流れ落ちます。
かえってきたおくさんが、ゴハおじさんの顔を見て「いったいぜんたい、なにがあったんです!」というと、ゴハおじさんは勝利宣言。「わしの勝ちだ! さあ、ロバにえさをやってきておくれ!」
<ゴハおじさんと三人の賢者>
「この町には、どんなむずかしい質問にもこたえられる、かしこい人がいますかな」と、三人の賢者からたずねられた領主。
ここでゴハおじさんの出番です。
三人の賢者の質問は?
「地球のまんなかは、さてどこでしょう?」
「空にはほしがいくつあるのでしょう?」
「わたしの頭に髪がなんぼんはえているかおしえてくだされ?」
この質問に答えられたら、あなたも昔話の主人公になれそうですよ。
「まともにに答えられない質問には、どんなふうに答えても、正解なんですよ!」と、ゴハおじさんなかなかユニークです。知恵をほこる賢者は何を考えたでしょうか。
子どもつなひき騒動/宝井 琴調・文 ささめや ゆき・絵/福音館書店/2017年
講談絵本とあって、読んでいると講談の名調子がそのままつたわってきます。
小間物屋の若狭屋甚兵衛に離縁されたお里さんに生まれた女の子。名前は花。甚兵衛さんが実の父親です。
甚兵衛さんは、お絹さんという女の人といっしょになりましたが、お絹さんはこどもに恵まれません。
ある日、お花が熱を出しますが、高い薬を買うお金がありません。やむをえず、若狭屋にかけこみますが、お金を貸してもらう代わりに、こどもを引き取るのが条件。助けたい一心から、お里さんは条件をのみます。
しかしどうしてもあきらめきれないお里さんのところへ、目にいっぱい涙をためたお花がやってきます。
お里さんは手をつけずにいたお金を若狭屋にかえし、お花と暮らす道を選びますが、これに納得しないお絹さんは奉行所に願い出ます。
ここで大岡越前守の登場です。
両者に子どもの手をひかせ・・・。
こどもの手をひきあうのは、生みの親と育ての親というのが多いのですが、子を手離した母親のところへ、母親が恋しい子がたずねてきて裁判沙汰になります。
以前はラジオで講談を聞く機会があったように思いますが、最近はほとんどきくことができません。
「これにて一件落着・・」の名セリフ、もう一度聞きたいですね。
お絹さんが五歳になったお花をひきとりたいと、手代をお里さんに使いにやりますが、この手代がいうセリフは、講談ならではでしょう。