グロースターの仕たて屋/作・絵:ビアトリクス・ポター:作・絵 石井 桃子・訳/福音館書店/1974年
一時代前のイギリスの街の風景、家の様子、洋服を着たねずみなどの絵が素敵ですが、いまでは珍しくなった手のひらサイズの絵本なので、ややもったいない感じです。
グロースターの町の腕は良いけれど貧しい仕立屋。
市長から注文を受けていたクリスマスの朝の婚礼用の上着とチョッキを裁ちあげ、あとは紅色の穴糸さえ揃えば明日の朝から縫いはじめられる用意をして店をでます。自宅は大学の前庭のとなりにあった、大きくもない家の台所。
家に帰った仕立て屋は、猫のシンプキンに手持ち最後の銀貨で、パンとミルクとソーセージ、そして紅色の穴糸を買ってくるように頼みました。
市長の上着とチョッキのことを考え、炉の前にすわっているときみょうな物音がします。食器だなのちゃわんのしたからカタコト カタコト カタコトカタという音。紅茶茶碗を、もちあげてみると、小さな 元気な婦人ねずみ、また音がして、茶碗をもちあげると、今度は小さな紳士ねずみ。
そのうち、カタコトカタの合唱がはじまって、でてくるでてくる小さなねずみ。
耳にも、首のつけねにも雪のシンプキンが買い物からかえってみると、閉じ込めていたはずのねずみが一匹もみあたりません。シンプキンは、買ってきた穴糸をどびんの中に隠してしまいます。
悪いことが続き、仕立て屋は疲れから熱が出て寝込み、夢の中でも「穴糸がたりぬ、穴糸がたりぬ!」とつぶやきます。
さて、市長の婚礼用の上着とチョッキは、クリスマスの朝までに仕立げられるか?。
ひもじい猫のシンプキンが、いらいらしながら町をあるきまわっていると、仕立屋の店から あかるい光が。のぞいてみると・・・。
ねずみたちが、上着を仕立てる場面は、たのしげな歌が五曲もあります。
グリムの「こびととくつや」では、こびとが、くつ屋が裁断しておいた革で靴をつくり、お礼にくつ屋が小さな服やくつを作ってあげると、こびとがいなくなります。
この話では、仕立屋は、ねずみの命を救ってあげるだけでなく、あまり布で、ねずみのチョッキ、ケープ,帽子のリボンなどをつくってあげているのが伏線になっています。
職人気質の仕立屋のあじがよく、ねこのシンプキンも、ねずみが上着を仕立てるの見て、隠していた穴糸をかえしますから、そのあとは仕立屋さんとも仲良くできたようです。