七人のシメオン ロシアのむかしばなし/田中友子・文 大畑 いくの・絵/BL出版/2018年
ロシアの昔話絵本で、素朴な感じの絵が、この話にぴったりです。
ある日、王さまが兄弟の畑をとおりかかり、七人の名前はみんなおなじシメオンで、それぞれがもつという「わざ」に興味をもちます。
一番上のシメオンは、天まで届く鉄の柱をたてられます。
二番目のシメオンは、その柱にのぼって四方の果てまで見渡せます。
三番目は船のり。あっというまに船もつくります。
四番目は弓名人。とんでいるハエもうち落とします。
五番目は、星占い師で、夜空の星をひとつのこらずかぞえられます
六番目は、農夫。一日で畑を耕し、麦をかりとれます。
七番目は、歌って踊り、笛を吹くのが得意です。
司令官は、末っ子は無駄に飲み食いするだけでおいだしましょうと、王さまに進言しますが、末っ子が笛を吹くとみんなは勢い良く踊りだします。馬も踊り、オンドリが飛び跳ね、牛も足をふみならします。
とくにいちばんはげしくおどったのは司令官でした。
この踊りは、自分でコントロールできません。いじわるをした司令官はたおれるまで踊ることに。
このことが、この司令官が、王さまに、とんでもない告げ口をすることになります。
昔話には引き立て役が欠かせませんが、司令官がその役割です。
兄弟が与えられた王さまのミッションは、はるかかなたのブヤーン島に住むエレーナ姫をつれてくること。王さまはエレーナ姫を妻にしたくなったのです。
三番目の船乗りがつくった船でブヤーン島につき、王さまの結婚の申し込みを伝えた兄弟でしたが、同行した司令官は、王さまはとしよりで、とんでもないいくじなし、おまけにオオカミやクマが昼も夜もうろついている国だといいたてると、姫は腹をたてて、兄弟を宮殿からおいだしてしまいます。
なんとか姫を連れ出した兄弟でしたが、司令官が、末っ子のシメオンは、「姫を自分のものしようと企んでいます。処刑するよう命じてください」と讒言し、処刑されそうになりますが・・・。
エレーナ姫は、船から逃げ出そうとしますが、もしいかなかったら、王さまが兄弟が首をはねるだろうと聞いて、王さまの妻になることを承諾して旅をつづけます。これだけのわざをもっていたら、王さまだってかなわないはずですが、そこは昔話の世界です。
バイオリンが活躍する類似の昔話もあります。ただこの話は、島から国に帰るまでの工程がかなり長いのが特徴です。