チベットのものいう鳥/田海燕・編 君島久子・訳/岩波書店/1977年
ある国の王のおそばつきが、奇術を用いて、精巧な玩具を作り、王さまのごきげんをとって高い位につき、王さまのお気に入りであることをかさにきて、おごりはじめます。
人々は、かれと争うことをこのみませんでした。
ところが一人の老画家が、かれをはじいらせようと城にでかけます。
老画家は、王さまの人の見る目がないことや、男の無能をあざわらいまあす。
おこった王さまは、男と老画家に技比べをさせ、老画家が負けたら首を切る、勝ったら、どんな望みでもかなえるといいます。
男は美人を画家のもとにやり、今夜良縁を結ばれてはどうかともちかけます。ところが画家が美人の右耳をなでると、美人はたちまちくだけて、木や竹や衣服がばらばらと地上に落ちます。
男は恥ずかしさから、画家がでられないよう部屋に鍵をかけてしまいます。
すると、画家は絵筆で壁に巨大な竜と首つり台を描き、首つり台には自分が首をつって死んでいる姿を描きます。ただ竜の目だけは描かずに残しておきました。
絵がまるで生きているようにみえたので、画家がこっそり首をつって死んでしまったと思った男の家に王さまと文武百官がやってきます。埋葬するためには王さまの許可が必要だったのです。
画家を埋葬しようと死体を取り出そうとしますが、どうしてもうまくいきません。
その時、新台のうしろから画家がとび出し、天をもふるわすような笑い声をたてます。
王さまは、この能力ある人物を許しておけば、勢力を増して自分に対して不利になるだろうと、画家を殺害しようとしますが、画家が竜の目を描き加えると、巨大な竜は壁を突き破って天へと飛び去って行きます。
古来から、竜は人々の想像をかきたてる存在です。