砂糖菓子の男 ギリシアのむかしばなし/アルニカ・エステル・再話 ユーリア・グコーヴァ・絵 酒寄進一・訳/西村書店/
タイトル通りギリシャの昔話で、抑えた色調で不思議な顔の描き方に特徴があります。
一人の王女が、自分好みの男がいなかったので、アーモンド、砂糖、麦で一人の男の像をつくり、四十日と四十夜祈り続けると、男は命を宿します。
はっとするような美しい男で、その美しさはたちまち、世界中に知れわります。
うわさを聞きつけた遠い国の女王が、砂糖菓子の男をつれさってしまいます。
王女は鉄の靴三つを作らせ、砂糖菓子の男を探す旅に出ます。
月の母のところたどりつきますが、砂糖菓子の男のゆくえはわかりません。
月の母はアーモンドの実をひとつ王女にわたして、こまったときにはわるようにいいます。
王女は、月の息子にいわれたように太陽のところへ。鉄の靴一足をはきつぶしたころ、太陽の母のところへたどりつきますが、やはり男の行方はわかりません。
太陽とその母は、王女にクルミをひとつわたし、こまったこととがあったらわるようにいいます。
王女は、太陽にいわれたとおり、星のところへ旅をつづけます。
星たちと星の母が、砂糖菓子の男のいる場所を知っていました。ここでは、ハシバミの実をひとつわたされます。
王女はアーモンドで金の糸車と糸巻きをだし、一晩だけ砂糖菓子の男をわたしのところへよこしてくれるなら、糸車と糸巻きを女王にあげると約束します。
このあたりは昔話のパターンで、男が眠り薬をのまされていたので目を覚ましません。
次に金のメンドリとヒヨコと交換しますが、やはり男は目をさましません。
三度目は、男は眠ったふりをして、馬にまたがり城から逃げ出します。
女王のたくらみを教えてくれたのは、仕立屋でした。
長い話だと、ここから逃走談がはじまりますが、意外なオチが待っています。
女王も自分の相手は自分でつくろうと、男の像を作り、祈りをささげますが、ぶつぶつ文句ばかりならべたので、四十日後、男がくさってしまいます。
絵では女王が恐ろしく描かれていますが、砂糖菓子の男に逃げられ、声を上げて泣き出す憎めない存在です。悪役が怒るというのはあっても、泣き出すのは、はじめてでした。