スイスの昔ばなし 王子と美しいパセリ/竹原威滋:編・訳/小峰書店/1989年初版
三人兄弟が出てきて、末の王子が位を継ぐという、よくある昔話。冒頭部が他のものと違います。
年老いた王さまが、三人の兄弟に課題を与え、うまくやりとげた者に跡を継がせようとします。
一つ目は、王さまの指輪をとおりぬける百エレの長さの亜麻布を手にいれるというもの。
末の王子はヒキガエルから小さな箱をもらい、上着のポケットいれて、城に帰ります。
二つ目の課題は、クルミの殻にはいるくらいの小さな犬を手に入れること。末の王子はヒキガエルから小さな犬が入っている箱をもらいます。
そして三つの目の課題は、一番美しい妻を手にいれること。
糸巻きを車にしたマカロニの箱、イナゴの御者、二匹のイエネズミの一行が砂埃をあげて、曲がり角についたとき、車は立派な馬車にかわり、ヒキガエルは美しい乙女にかわります。
スイス版では、兄弟同士があらそうことはありません。末の王子は乙女と結婚しますが、王さまは、上の二人の兄弟に相続分を支払います。
ところで、この話の導入部ですが、パセリを食べて美しく育つ娘がでてきます。このパセリちゃんがヒキガエルになったのは、あまり美しくなった乙女をめぐって、争いがおこり、このままでは不幸が起きるにちがいないと、母親が「世界の果ての橋の下にいる、みにくいヒキガエルになってしまうがいい!」と、呪いの言葉をはいたのが原因でした。
呪いの言葉が現実になるというのは、よくあるパターン。
兄弟同士が争わず、ヒキガエルの正体がはじめにでてきて、安心できます。
前半部と後半部のつなぎは「さてさて、娘の方は、どこへなりと好きなところへ行かせてておきましょうよ」。
パセリがだいすきな娘が、自分の庭にはあまりパセリがなかったので、隣にある尼僧院に盗みに入るところもあります。
パセリ好きの子になってほしいという願いが込められているのでしょうか。リンゴなどほかのものでもよさそうですが・・・。