赤い目のドラゴン/作:アストリッド・リンドグレーン・文 イロン・ヴィークランド・絵 ヤンソン 由実子・訳/岩波書店
四月のある朝、突然やってきたドラゴンと、十月二日の突然の別れ。
「わたしは そのばん おふとんをすっぽりかぶって、赤い目をしたみどりいろの わたしたちのドラゴンのことをかんがえて、なきました」
私が、ぶたごやにいたドラゴンをみつけたのは、ぶたが十匹のあかちゃんをうんだつぎの日でした。
おかあさんぶたは、はじめはおっぱいをあげていましたが、するどい歯でかみつくので、おっぱいをあげなくなります。
このままでは死んでしまいます。私と弟は、雨の日も風の日もドラゴンがすきな、つかいのこしのろうそく、ひも、コルクをもっていってあげます。
ドラゴンはひとこともいわず、ただたべおわったときだけは、大きな音でゲップをし、しっぽを右左にふってまんぞくそうな音をたてました。
ドラゴンは、ごちそうをとられないように、こぶたにかみついたり、ぶたのえさ箱でおよいだりしました。
ときどき、機嫌が悪くなって、何日もそんなふううにしていると、私と弟は、とてもはらがたって、ごちそうをあげないというと、小さなドラゴンは、たちまちなきはじめます。かわいそうになって、クリスマスのろうそうを、ほしいだけあげると、小さなドラゴンは、なくのをやめて、しっぽをふってわらいます。
十月二日の夕方、夕日にあかくそまった牧場で、寝る前の運動をしているおかあさんぶたやこぶた、小さいドラゴンを見守っていたとき、、小さいドラゴンが、私のまえにやってきて、つめたいはなさきを、わたしのほっぺにすりつけました、目はなみだでいっぱいでした。別れの涙でした。
ドラゴンは、たかくたかくまいあがり、夕日に向かってとんでいきます。
赤い目をしたとてもチャーミングな小さなドラゴン。別れの日の真っ赤な太陽のあざやかさが印象的です。
いつまでも人間のそばにいることができなかったドラゴン。別れは必然ですが、私と弟とすごした日々をわすれることはなさそうです。
2005年に荒井良二さんが、2002年に、スウェーデン政府がリンドグレーンを記念して創設した「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞しています。
この4月にニュージーランドの11歳の女の子が「竜が見つかったら てなずけられるよう超能力もさずけて」と首相あて、思いを伝えたというニュースがありました。ほほえましい。
首相も子どもの気持ちを尊重して直筆の返事をしたといいますから、流石です。