シマフクロウのぽこ/文:志茂田 景樹 絵:木島 誠悟/ポプラ社/2017年
"いさむ"くんが、獣医師の”えとう”さんと、猛禽類医学研究所にむかって走っているドクターカーには、巣箱から落ちてけがをしたシマフクロウのこどもがねむっていました。
えとうさんは、電線に触って感電したシマフクロウを手当てしたこともあります。
えとうさんは、シマフクロウのことについて、いろいろ話してくれます。シマフクロウは、魚を捕るとき、川に沿って低く飛ぶ。そのため、であいがしらに、橋の上を走ってくる車と衝突しやすいことも話してくれます。
ある日、猛禽類医学研究所でひらかれたシマフクロウの観察会のかえりがけ、いさむくんは、この前たすけたシマフクロウのこどものことをききました。
すると、そのシマフクロウは、障害があるので、森に戻すのは無理で、医学研究所で、しあわせにくらせるように、”ぽこ”という名前がつけられていまいた。
いさむくんは、先生に言われて、足の指にさわってみると、あったかです。
いさむくんは、羽にもさわってみます。たくさんの人が、ぽこにさわってみると みんなぽこをすきになってくれそうです。
「ぽこ」は、シマフクロウと人をつなぐ、親善大使になってくれそうです。そして、いさむくんには、将来獣医師になる夢ができました。
絶滅危惧種であるシマフクロウは、北海道に生息し、環境省の調査では一時の100羽ていどから165羽(2018年)に増えているといいます。
アイヌ語で、コタンコロカムイと呼ばれる(呼び方は複数?)シマフクロウは、開発や水質汚染、漁業との競合、交通事故などにより生息数が激減。
日本では1971年に国の天然記念物、1993年に国内希少野生動植物種に指定され、1980年代から巣箱の設置、冬季の生け簀による給餌、生息地を保護区や保護林に指定するなどの保護対策が進められているほか、環境省釧路湿原野生生物保護センターでは、傷病個体の治療と野生復帰を行っているといいます。
絶滅危惧種で、なじみのあるものではトキ。 明治時代の中ごろまでは、日本の各地にふつうにすんでいたが、美しい羽をとるために鉄砲でうち殺されるようになって、急に数が減少。さらに、トキの好きな森や湿地が減ったりして環境も悪くなり、80年ほど前にはほとんど見られなくなったといいます。
2003年、最後に残っためすの「キン」1羽が死んで、日本産のトキは絶滅し、今残っているトキは中国産だけといいます。
地道な努力を重ねている人がいることをあらためて知ることができました。