今年で10年、あまり多くはないのですが、東日本大震災にかかる絵本で、これまでふれたものです。もっともっと多くの絵本があったにもかかわらず、少ないことにがっかりでした。
はしれ、上へ! つなみてんでんこ/指田 和・文 伊藤 秀男・絵/ポプラ社/2013年初版
TVで指田さんが出版までの苦労をはなされていたのをみて購入しました。
3・11から6年たって、この年 生まれた子どもが小学校に入学。
巻末に3・11当日、釜石東中学校と鵜住居小学校の子どもたち、園児もふくめ、600人が2キロメートルにわたって逃げた避難ルートの地図がそえられています。
第一避難場所の”やまざきデイサービス”についたとき、うしろから津波。さらにもっと上の第二避難所の”恋の峠”まで。この場面の臨場感と緊張感がすべてを物語っているように思いました。
釜石では2004年から津波にそなえる訓練してきて、これが役に立ったとありました。
3・11で大勢の方が亡くなっていますが、とりわけ大川小学校の児童、教職員がおおぜい亡くなったことがわすれられません。
”てんでんこ新聞”特別号がついているのですが、子どもたちの家族や親せきの方もたくさんいたというのも忘れてはならないことです。
絵はお世辞にもうまいという感じがしないのですが、当日の様子をよく表しています。
"つなみ てんでんこ"は、津波のときには、てんでんばらばらに逃げろという東北につたわる言葉ですが、一人ではなく集団で逃げられたことも、どれだけこころづよかったにちがいありません。
いざというとき、適切な判断ができるか自問自答しました。
つい先日のテレビ、釜石東中生徒の5年後を放送していましたが、当日何らかの理由で学校を休んでいた一人が犠牲になったことがでてきました。(2017.7.23)
かぜのでんわ/いもとようこ/金の星社/2014年初版
だれがおいたのかもわからない山の上の一台の電話。線はつながっていません。
それでもたぬきのぼうや、うさぎのおかあさん、きつねのおとうさん、ねこさんがつぎつぎにやってきます。
するとある日、リーンリーンと電話が鳴り始めます。線はつながっていないはずなのに。
だれもが自由に使えて、今はそばにいない人と話すことができる電話。
岩手県大槌町に東日本大震災のあと設置された風の電話ボックスをモデルにした絵本とありました。
亡くなった大切な人に自分の思いを伝えると必ずその人にとどく電話。ほんとに切ない思いが伝わってきて、おもわずうるるとしました。
あさになったので まどをあけますよ/作・絵:荒井 良二/偕成社/2011年初版
絵がどれも絵画のようです。
たまたまEテレの日曜美術館でモネが紹介されていましたが、荒井さんがでて、モネによせる思いを語られていました。
モネの作品は、中学校の美術の時間にみていた程度。
たしかに、荒井さんの絵のタッチはモネ風のようでした。
「あさになったので まどをあけますよ」というフレーズで、山、街、海、部屋の風景がみえます。
どれも朝のすがすがしい風景です。
本が出版されたのが2011年12月。3.11の大震災後ですから、作者のメッセージがこめられているのかもしれません。
朝、希望と勇気をあたえてくれる時間です。明けない夜はありません。そんな時間を表現しているようでした。
東北んめえもんのうた/長谷川義史/佼成出版社/2013年3月初版
とにかくパワフルで楽しい。
出版が2013年で、あの震災から2年。長谷川流応援歌でしょうか。
宮城の牛タン、笹かま、はらこめし、ずんだもち、福島の喜多方ラーメン、あんぽがき、こづずゆ、うすかわまんじゅう、岩手の盛岡冷麺、わんこそば、じゃじゃ麺など「うんめもん」がいっぱい。
楽譜があったので、めずらしくかみさんにピアノを弾いてみてもらった。
まだよく歌えないが、リズムがなんともいえない。
踊りの振り付けや、「うんめもん」を食べるときのゼスチャーまで。
もうひとつの楽しみは、さりげなくでてくる三県にゆかりの人物など。
宮城では、伊達正宗、楽天の田中将大、ペガルタ仙台のマスコットキャクター。そしてなにげなくでてくる志賀直哉。
福島では、フラガール、野口英世、相馬の野馬追、白虎隊。「西田とし」とあるのは西田敏行か。
岩手ではなんといっても宮沢賢治。遠野物語の柳田國男、石川啄木まで。
賢治さんが「麺ニモマケズ」と、冷麺を食べているそばで「賢治なう」と携帯をいじっています。
でてくる人物は、小さい子にとってはなじみが少ないので、大人の方が楽しめるかも。
ほうれんそうはないています/鎌田實・文 長谷川義史・絵/ポプラ社/2014年初版
いろもない
かおりもない
かたちもない
おともない
つちが ないている
うみが ないている
そらが ないている
きが ないている
はなが ないている
どうぶつが ないている
みんな ないている
放射能のこわさは、直接感じることができないだけでなく、その影響は今後長期間にわたるこわさがあります。それでも原発が再稼働し、偉い人がトップセールスと称して海外に売り込み、廃棄物の最終処分場のあてもなく、核のごみを出し続けようとする
ちゃんと食べられたかったという、野菜を、お米を、牛乳を、魚を再び生み出さないためには、ひとりひとりが問われています。
こんな視点もあったのかという絵本です。3.11からちょうど.3年目に出版されています。