111本の木/リナ・シン・文 マリアンヌ・フェラー・絵 こだま ともこ・訳/光村教育図書/2021年
実話にもとずく絵本です。
ほんの少し前、インドの各地では、女の子は生まれても歓迎されませんでした。結婚するとき、両親はたくさんのお金を結婚相手の家族に用意しなければなりませんでした。そのうえ、女の子は相手の財産とされていたのです。
そんな時、一人の男がたちあがりました。選挙で村長になったスンダルは、女の子が生まれてくるのを お祝いして、111本の木を植えて、美しい自然を取り戻そうとしたのです。
村の近くにあった大理石工場ではたらいていたスンダルさんは、工場からでた土が放りだされて、荒れ地がどんどん広がることに、怒りを覚えていました。
スンダルさんが ちいさいころ、母親は、頭に水がめをのせ、遠くの井戸まで水をくむにいくのが日課でしたが、毒蛇にかまれて亡くなりました。大きくなって、ふたりの娘と、ひとりの息子にめぐまれましたが、うえの娘を病気で亡くしていました。
スンダルさんは、自分たちの暮らしが、まわりの自然に ささえられていることや いのちのあるもの、すべてを大切にすることを、子どもたちに話していたのです。
はじめ、理解されなかったスンダルさんの考えでしたが、村の人とじっくり話し合い、木を育てるのに必要な水を、堀を作り雨水をためました。たまった水は、飲み水にもつかえ、遠くまで水を汲みにいく必要もなくなりました。いまでは、女の子も、男の子とならんで勉強しています。
エコとジェンダーフリーが結びつかなかったのですが、エコは自然環境を大事にする、ジェンダーフリーは、性別にかかわらず、人として尊ばれるという意味では、共通しています。
111という数字は、スルダンさんが地面に引いた三本の線、娘、水、木をあらわしています。
このほかにもスルダンさんの、さまざまな工夫を知ることもできます。