アフリカの民話集/しあわせのなる木/島岡由美子・文/未来社/2017年
貧乏な男が大富豪の家の使用人として働いていました。
庭仕事と水まき分の賃金で、洗濯から買い物まで全部やらされるので、ほかの屋敷とかけもちで仕事ができず、いっこうに暮らしが楽になりません。
貧乏な男は、毎日、塩やコメをすこしづつ富豪から、わけてもらっていましたが そのたびに「またものをもらいにきたのか、このびんぼうやろうが」と、さんざんどなりつけられていました。
貧乏な男は、大富豪の家で働きだしてから十年目目のある日、これまでの待遇に我慢できなくなって、仕事をやめるといいました。すごい剣幕で一気にしゃべり、すっきりした男は、庭仕事をほっぽって、自分の家にかえっていきました。
一方、大富豪は、生まれてからこれまで、人から怒られたことはありません。貧乏な男に怒られたことが、悔しくて悔しくてたまらない富豪は、男を焼き殺そうと、家の前にはえている草むらにココナッツ油をまいて火をつけました。
火が貧乏な男のぼろ家に、おそいかかろうとしたときに突然大風が吹いてきて、火がむきをかえ富豪の家にむかい、あっという間に、豪華な屋敷が燃えてしまいます。
すべてを失った富豪は、貧乏な男の家に転がり込み、自分がさげすんでロバあつかいしていたその貧乏やろうからほどこしをうける、大びんぼうやろうになってしまいました。
この「アフリカ民話集」の二十の話は、「きょうの話はこれでおしまい。ほしけりゃもってきな。いらなきゃ海にすてとくれ。」と、おわります。東アフリカの昔話ですが、おわりかたも、さまざです。