アメリカのむかし話/渡辺茂男:編・訳/偕成社文庫/1977年
黒人の昔話ですから、天国にいきたいというのもうなずけまが、結末は?
ご主人が、めっぽう人使いがあらくて、ちっともやすませてくれないので、ジョンのねがいは、天国にいくこと。ひまさえあれば、神さまにお祈りをしていました。
奴隷の主人がジョンの小屋のそばをとおりかかり、このお祈りをきくと、じぶんの家に戻り、白い大きなシーツを頭からかぶると、ジョンの小屋の戸をたたきました。
「ジョン、わたしは、神さまだ。天国の馬車にのっておまえをつれにきたのだ。さあ、このいやな世界からつれていってやる」
おかみさんがだまっていると、神さまはまたジョンの名前をよびました。「ジョン、ジョン、天国へいこう。そうすれば、もう、畑も耕さなくてもよいし、トウモロコシの刈り入れもせんでよい。さあ、天国へいこう」
おかみさんが、ジョンはいないというと、神さまのふりをした主人は、こんどは おくさんを つれていこうとします。
あわてた おかみさんは、ジョンを 天国にいかせようとしますが、ジョンはベッドの下に身をかくし、そとにでようとしません。神さまが大きな声で呼び続けるので、おかみさんはジョンがかくれていることを いってしまいました。
天国へいきたくないジョンは、きたないかっこうでは天国にいけない、神さまの白い着物がまぶしくて目がくらむなど、時間を稼ぎます。それから、神さまをほんのすこしばかりうしろにさがらせると、すきをみてカボチャ畑をかけぬけて、ワタ畑にとびこみました。
神さまもおいかけますが、ジョンには おいつけません。
おくさんは、泣く子どもにいいます。
「心配おしでないよ。かけっこなら、神さまが、うちのとうちゃんにかなうもんですか。」
主人のお遊びでしたが、天国へいきたいといいながら、いざとなると尻込みするのは、いくら苦しくとも、やっぱり命の方が大事なのかも。