どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

うみのがくたい

2021年03月02日 | 絵本(日本)

      うみのがくたい/大塚勇三・作 丸木 俊・絵/福音館書店/1964年

 

 ある船で働いている人たちは音楽好きで、楽隊をつくっていました。夕方になると、手の空いている人たちは 甲板で合奏していましたが、そのうち、船の人たちは、おかしなことに きがつきました。いつでも 音楽がはじまると、船のまわりにクジラやサメ、イルカやカツオなど、とにかくびっくりするほど、たくさんの魚が集まってきたのです。

 ある日の夕方、船が嵐に巻き込まれ、もう駄目だと思ったことも、何度かありましたが、不思議と、船はしずみませんでした。クジラやサメ、そのほかの魚が、船が沈まないように下から押し上げていたのです。

 「昨夜は楽隊をやらなかったね」という クジラに、船の修理がおわった船乗りたちは、知っているかぎりの音楽を、次から次へと演奏します。

 やがて「じぶんが やれたら、どんなに いいかなあ」というクジラに、船の人たちはラッパを投げてあげ、ほしいという魚たちには ピッコロ、バイオリン、ビオラ、トライアングル、カスタネットまで投げてあげます。

 「さあ、やってごらん」 船の人たちの よびかけで 魚たちの演奏がはじまります。はじめはそろいませんでしたが、いつのまにか、音がそろい、きいたこともない 不思議な音楽が、波の上に 響き渡りました。

 これからあと、そのあたりの海を、船が通ると ときどき 海の どこからか 不思議な音楽が響いてきます。とりわけ、うつくしい夕焼けのときなどは、本当に、素晴らしいといいます。

 

 音楽好きの魚という発想にびっくりです。しかし、素晴らしい音楽は、人間のものだけではないのかも。

 最後の夕焼けの絵は、まさに幻想的です。