どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

カッパのわび状・・岐阜

2023年05月01日 | 昔話(中部)

          岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年

 

 ある日、のどかな村の五作じいさんの綿畑が、何者かに ひどくあらされ、それが毎晩のように続いた。

 了福寺のおしょうさまが、このさわぎを聞き、綿畑を見張っていると、川面になにやらあやしいかげ。おしょうさまが、ふところにしのばせておいた荒縄をひっつかむと、とびかかった。不意をくらった黒い影は、あわてて逃げ出そうとしたが、腕っぷしの強いおしょうさまに、たちまちとらえられてしまった。

 お寺の柱にくくりつけ、ろうそくのあかりで、よくよく見てみれば、なんとこのふとどきもの、カッパだった。おしょうさんが、わけをきいてみると、カッパは ぽつりぽつりと話しはじめた。「この前、橋の上をよめさんの行列が通り、よめさんは、きれいな綿ぼうしをかぶっとった。満月の夜、よめいりするうちのむすめにも、あんな綿ぼうしをかぶせてやりたい」という。

 この話を聞いたおしょうさまは、庫裏の奥から包みをとりだしてきて、「これは、わしのばあさまがかぶった綿ぼうし。すこし古うなっているがつかうがよい」と、カッパにわたされた。

 すると、満月の夜、お寺に一通の手紙がなげこまれた。

 「おしょうさん わたぼうしをありがとう もうわるさはけっしてしません」ミミズのはったような字であったが、なんとこの手紙、カッパのわび状っだった。それからは綿畑があらされることもなくなったという。

 

 綿畑がないと成立しない話ですが、むすめのことを思いやるカッパの親の気持ちがよくわかります。