フイリピンの昔ばなし/カラオの洞窟/荒木博之・編訳 三谷靭彦・絵/小峰書店/1989年
天地創造の昔話(神話に近いのかも!)。
ずっとむかし三人の神さまがいました。いちばんえらい神さまが、バタラ神といって天空を支配していました。そして大地をキャプタン神が、海をマグアエン神がおさめていたのです。ある日、バタラ神が、キャプタン神に人間を創るように命じました。
キャプタン神は山の中腹にかまどをつくりました。それから河岸から両手に一つかみづつの粘土をとってきて、人間の形にこねあげ、それをかまどにいれて焼きあげました。かまどからだしてみると、それは焼けすぎて黒くなっていました。この人たちが黒人の祖先になったのです。
つぎに、キャプタン神は、最初のように男と女の姿をつくり、それをかまどに入れて焼きました。今度は焼けすぎないように、はやくかまどからだしたので、色が白っぽくなりました。この男と女の人が、白人の祖先になったのです。
つぎに、キャプテンは、山のてっぺんから粘土をとってきて、男女の姿をつくりかまどにいれました。今度は、薪に生の木を使ったので、でてきた人間は黄色い色をしていました。この男女が黄色人種の祖先になったのです。
キャプタンがバタラ神に相談し、畑と海の底からとってきた粘土ををまぜ、焼き上げると、男も女もちょうどよい具合に焼きあがっていました。褐色かがったちょうどよい色に。この人たちがフィリピン人の祖先になったのです。
そしてこのカラオのかまどでつくられた人たちが世界中にひろまっていったのです。
マグアエンは、人間と違う生き物をつくろうとして、雄と雌の二ひきの猿をつくってしまい、猿を追い払ったので、猿は木の上に住むようになったのです。
それからマグアエンは粘土からいろいろの大きさや形の生き物をつくりあげました。それをかまどで焼いてとりだすと、海の中になげてやりました。海になげこまれたのは、魚やほかの生き物になりましたが、沼地に落ちた生き物は、森の動物になり、河岸に落ちたものは、ワニやカバや蛙のように陸でも海でも生活できる動物になりました。
ふたりの神が使ったかまどは、カラオの洞窟とよばれています。
生き物の誕生は、古来からの疑問であったでしょうから、世界各地におなじような話があってもおかしくありませんが、神話の領域でしょうか。