世界名作おはなし玉手箱/齋藤チヨ/すずき出版/2000年
木が満月の真夜中、川へ水を飲みに行くという昔話ならではの展開。
この木の下には、たくさんの宝物がありふだんは木が宝物の番をしていて、見つかったら殺されてしまいます。
宝物を手にいれようと森へ出かけたのは魔法使いのマコラ、そして親がなくなってマコラに預けられたムワンギ。
マコラは、ムワンギを杖でびっしと打っていそがせます。とちゅうサルがおなかをすかせ食べるものをくれるよう頼みますが、マコラは、「腹がへったら、飢え死にしたらいいじゃないか」と、サルを蹴り上げました。しかし、ムワンギは立ち止まり、「おれの夕ご飯だけど、でもお前のほうが、もっとおなかがすいているだろう!」と、さげていた袋の中から、ゆでたとうもろこしを二本取り出してサルにあげました。
目的地につくと、マコラは満月の夜までまつようにいいました。マコラは、「満月の真夜中、木たちはみんな根っこを引き抜いて、川へ水を飲みに行く、根っこを引き抜いたあとには、大きな穴ができる。その穴の中には、たくさんの宝物がしまってあるからそれをちょうだいするんだ。」といいました。
木が川へいくと、マコラは、穴の中へおり、宝物を籠にいれ、ムワンギは、それを引っ張り上げます。なんども籠が吊り上げられては降ろされ、夜が明けようにとする前に、木たちが歩く音が、ズシン・・ズシン・・と聞こえてきました。
穴にいたマコラが、ムワンギにつるをさげるようにいいましたが、つるが見つかりません。音がだんだん近づき「ぼくはきっと、死んでしまうんだ」と思ったとき、ムワンギの体は、何かにぐっと引っ張られて、うしろの大きな岩の下に転がりました。それは、森の道で出会った、おなかをすかせていたサルでした。サルは、穴のつるはとってしまったと、ささやきました。
大きな木たちが、マコラの入っている穴に根を下ろしたとき、ムワンギはマコラの最後の悲鳴を聞きました。
太陽が昇ると、ムワンギは、岩のそばにあった宝石や金を袋にいれ、森を出て、いままでに行ったことのないところへ旅に出ました。