佐賀のむかし話/佐賀県小学校教育研究会国語部会編/日本標準/1977年
天から鎖が落ちてくる話で、類似の話も多い。
二人の兄弟が留守番しているところに、やまんばがやってきて、なにかうまいものを食わせろと 脅かす。気のきいたあんちゃんが「なんにも食うもんはなか」と、いうと、それなら兄弟を食べると、大きな口を あけてせまったので、ふたりはびっくりして裏の柿の木によじ登る。
やまんばが、どうして柿の木に登ったかと聞くと、あんちゃんは、足の裏に油ばつけてのぼったという。やまんばが、足の裏にどっさり油をつけてのぼろうとするが、足がつるつるして、のぼれない。
弟が、木に、きずつけてのぼれと正直に話すと、やまんばは、木にきずをつけてのぼりはじめ、だんだん二人にちかづく。あんちゃんは、こりゃいかんと思って「天道さん、天道さん、鉄の鎖ばおろしてください」と祈ると、天の一角からジャラジャラと、大きな音がして、鉄の鎖がおちてきたので、その鎖にとびうつって、空にのぼっていく。
やまんばが、どうしてその鎖にのぼったか聞くと、あんちゃんは、天道さんに「鎖の綱ばおろしてください」と、たのんだという。
やまんばがたのむと、天からおりてきたのは、くさった綱。やまんばが、これにとびつくと、綱は、プツンときれて、柿の木から まっさかさまにおちて、石に頭をぶつけてしんでしまう。そのときの血が、そばにあったそばの茎にかかり、それまで青かったそばの茎が、そのときから 赤くなったという。
(そいぎ、ばぁっきゃ)