かたつむりとさる/再話・ヤン・サン 下絵・ハー・ダン 刺繍・モンのこどもたち 訳・やすい きよこ/福音館書店/1994年月刊こどものとも年中向
どこの国にもおなじような話がありますが、いわば「ウサギとカメ」のラオス・モン族版。
サルとカタツムリが、三つの山と三つの谷をこえるというスケールの大きな競争です。カタツムリは親類縁者を総動員し、とちゅうにちらばって、サルが「おーい、かたつむり、おまえ どこまで きた?」というと、サルより先にいるカタツムリが、「ここまで きたよ、さるさんよー」とこたえていきます。
タイの難民キャンプに暮らすラオス少数民族の子どもたちが、刺繍で描かいているのが特徴で、登場するのは、サルとカタツムリ、そして草だけという絵で、素朴な感じがします。
「ウサギとカメ」は、ウサギの自業自得ですが、こちらは知恵で勝負です。
ラオス・モン族を調べてみるとベトナム戦争時、アメリカに都合よく利用された歴史があり、アメリカにも約三十万が居住しているといいます。
こうした絵本がなかったら、少数民族について知ることは、一生ありませんでした。