グリム童話 かえるの王さま/ビネッテ・シュレーダー・絵 矢川 澄子・訳/岩波書店/1992年
はっとするほど美しいおひめさまが泉に落とした大事な金のまり。泣いて悲しんでいるおひめさまに、カエルが声をかけます。
「真珠や宝石、金のかんむりなどいらない。遊び相手にしてほしい。あんたと一緒のテーブルで金のお皿から食べ、いっしょのコップからのんで、いっしょのベッドにねかせてくれ」るなら、すぐに金のまりをひろってきてあげるといいます。
心の中では「カエルがなにをいっての」と思ったおひめさまが、適当な約束をするとカエルはすぐに、金のまりをくわえてあがってきます。
おひめさまはいそいで城にかえり、それっきりカエルのことは忘れてしまいます。
しかし次の日、カエルは城にやってきて・・・。
「約束をまもらなくてはいかんな」と、王さまからいわれ、ドアをあけると「だっこして、となりにすわらせて」「一緒に食べられるように金のお皿をこっちによこせ」「いっしょにおねんねしたいから、絹のベッドをしつらえてよ」というカエルを嫌悪しながら、また王さまから「こまったときに助けてくれたお方への、ご恩を忘れるなんて、とんでもない」と、いわれ、さらにベッドに横になったおひめさまのそばでゆっくり眠りたいとカエルからいわれると、おひめさまは、こんどこそ頭にきて、カエルを力任せに壁にたたきつけると、床に落ちたカエルはきれいな優しい目をした王子になっていました。王子はわるい魔女の呪いで、カエルにされていたのです。
自己中心的なおひめさまですが、さすがにカエルと一緒に寝るというのは、我慢できなかったのでしょう。
最初、この話を聞いたとき、叩きつけるシーンにびっくりしたのを思い出しました。
ここにでてくる王さま。カエルとの約束をまもるようにさとすのは、おひめさまのわがままに手をやいていたのかも。
後半に、胸に鉄のたがを三本はめた忠臣ハインリヒがでてきますが、ここまで何の伏線もなく急に登場するので、あれっという思い。
「たが」は、子どもに理解できるでしょうか。
カエルが王子に変わる場面は、好き嫌いがわかれそうです。城はカエルの目線で描かれているので奥行きがあります。