三重のむかし話/三重県小学校国語教育研究会編/日本標準/1977年
「地震、雷、火事、親父」とくると、怖いものの典型。まあ、今のご時世では、親父の権威も散々。
ある日、にわかに黒い雲が広がって、カミナリがなった。ドンバリという音がして、しばらくすると「助けてくれ、助けてくれ」と、神社の深井戸の中から聞こえてきた。
村の人たちがのぞいてみると、落ちていたのはカミナリ。カミナリは、「落ちそこなった。たのむ助けてくれ」と、あわれな声を出したが、カミナリになんべんも暴れまわられたら大変と、村人は、重い石の蓋をして、二度度出られんようにした。
それでも、カミナリが、もう悪さをしないと頼んだので、さすがに村人もかわいそうになって、「これから村に落ちんと約束出来たらゆるしてやる」というと、カミナリは、「二度と落ちたりしません。そのしるしに、たいこ一つを井戸において帰ります。このたいこがあれば、この井戸は、年中いっぱいみずがたまります。どうぞだしておくれ」と、頼んだ。
村人は、カミナリをだしてやった。それから、この村にはカミナリが落ちなくなったという。
自然現象との付き合い方も、科学の進歩によってだいぶ変わってきました。