どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

とさかにごはん

2020年04月11日 | 絵本(日本)

         とさかにごはん/スズキコージ/理論社/1993年

 

 ハンジュクさんは あるひ たびに でることにしました。おともは みるとんくん。

 耳慣れない名前ですが「ハンジュク」は人間、「みると」は どうもおんどり。

 最後は「とさかに ごはん」でおわります。

 物語風にはなっているのですが、展開に首をかしげていると、でだしは、前の文の最後の文字からはじまっています。「ごはん」でおわるので、はじめが「はんじゅく」からはじまるようです。

 つまり しりとりをしているのです。

 よくわからいというのが実感ですが、ハンジュクさんの家、木、パン屋、駅舎、急に出てくるイタリアの風景など、とってもユニークなものばかり。

 スズキコージ流の強烈な絵を楽しませてもらいました。


王さまと九人のきょうだい、シナの五にんきょうだい、七人のきょうだい

2020年04月10日 | 絵本(昔話・外国)


     王さまと九人のきょうだい/君島久子・訳 赤羽末吉・絵/岩波書店/1969年初版

 初版が1969年の中国イ族の昔話で、まもなく半世紀。

 読み聞かせにも好評の絵本です。(おなじ岩波から-白いりゅう 黒いりゅう/君島久子・訳/1964年出版には、「九人のきょうだい」としてのっています)。


 さまざまな特技をもつ九人の兄弟と王さまとの駆け引きがテンポよく展開していきます。

 兄弟の名前が「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「みずくぐり」と読み始めると先の展開が予想できます。

 類似する昔話では、主人公が旅しているときに特技をもつ者とであって、その力を借りて難題を解決するパターンが多いのですが、子どもに恵まれない老夫婦にいっぺんに九つ子がうまれるというはじまりです。
 
 おばあさんが池のほとりで鳴いていると白髪の老人があらわれ、一粒飲むと子どもがうまれるという丸薬を九粒わたしてくれます。
 おばあさんはその丸薬を一粒飲んで1年待つますが子どもは生まれません。そこで、おばあさんは我慢できずあるだけの丸薬をいっぺんに飲んでしまいます。
 すると、ある日突然9人の赤ん坊が生まれます。ひどく貧乏な老夫婦は困りはてますが、丸薬をくれた白髪の老人が現れ、何もせずとも子どもたちは育つといい、9人の子どもの名前をつけてくれます。

 子どもたちが大きくなった頃、都では王さまの宮殿の竜のかたちをした柱が倒れてしまい大騒ぎになっていました。王さまのけらいや都の人びとの誰一人、この柱をなおすことができません。そこで王さまは国中に、柱を元通りに戻した者にのぞみのほうびをとらせるとおふれを出します。
 それを耳にした九人の兄弟のうち「ちからもち」が出かけていき、あっというまに宮殿の柱を元通りにしてしまいます。

 のぞみの褒美をもらえるはずだったのですが、とくにのぞみはせず「ちからもち」は家にかえります。
 なにも望まなかったので、「いまにきっとわしをたおして、この国の王になるにちがいない」と王さまは疑心暗鬼にかられたのでしょうか次々と難題をだしていきます。

 顔つきも体型もみんな同じで見分けがつかない兄弟がかわるがわるでかけていき難題を切り抜けます。

 読み聞かせで評判がいいのが「ながすね」。高い山から谷底へ突き落してしまえという王さまの命令で、「ながすね」が、山から突き落とされると、片方のすねが谷底にとどき、片方は向かいに山までとどきます。

 最後は、「みずくぐり」の吹きかけた水が王さまも宮殿もすべて飲み込み、悪い王さまがいなくなります。

 チームワークの良さを感じさせてくれる昔話です。

 グリムの「六人男、世界をのし歩く」(子どもに語るグリムの昔話2/佐々梨代子・野村宏訳/こぐま社/2000年第18刷)にでてくるのは、(力持ち)・・木を引き抜くほどの力持ち、(狩人)・・・遠くのものを射抜く名人、(鼻ふき男)・遠くから鼻息で風車を回す男、(走りや)・・飛んでる鳥でも追いつけないほど早く走る男、(ぼうし男)・ぼうしをかぶるとあたりがおそろしく寒くなる男)と五人です。

 モンゴルの「北斗七星の話」(子どもに語るモンゴルの昔話/蓮見治雄訳・再話 平田美恵子再話/こぐま社)では、(山かかえ)・・山をかかえるほどの力持ち、(長うで)・・天まで伸びる腕をもつ男、(聞き耳)・・どんな遠くの話でも聞こえる耳を持つ男、(はやあし)・・とてつもなく早く走る、(のみつくし)・・海の水まで飲み干す男と五人です。


 類話が多いパターンだとは思っていましたが、語るとすると「王さまと九人のきょうだい」でしょうか。

 また、大分前に出版されていますが、少しも古さを感じさせない赤羽さんの絵です。

 ついでですが、イ族は中国の少数民族の一つで、2010年の全国人口統計で870万人で中国政府が公認!する56の民族の中で7番目に多いといいます。

 

      シナの五にんきょうだい/クレール・H・ビショップ・文 クルト・ビーゼ・絵/石井桃子・訳/福音館書店/1961年

 この絵本は中国が舞台ですが、外国の方がかかれています。原著は1938年とおおよそ80年以上前。モノクロで少しだけオレンジがつかわれています。1995年瑞雲社から川本三郎訳で発行されていますが、30年以上も前の石井桃子訳が手元にありました。

 「王さまと九人のきょうだい」と同じように、特別な力を持つ五人の兄弟が協力し合って、一番目の兄さんの危機を救い出すというシンプルな構成です。

 一番目のお兄さんが、子どもを殺した罪を問われ、首を切られそうになります。

 このお兄さんは、海の水を飲みほして漁をしていたのですが、あるとき男の子に頼まれ一緒に海に出かけます。そのとき一番上のお兄さんの言うことを守るという約束でした。お兄さんが海の水を飲み干すと魚や貝、海藻などは取り放題。男の子はポケットいっぱいに詰め込みます。

 ところが、一番目の兄さんがつかれて、口の中に入れていた海中の水をはきだしそうになります。じっと我慢して、男の子にもどるよう合図しますが、男の子は、あかんべいをして どんどん 逃げて行ってしまいます。これ以上我慢できなくなった一番上のお兄さんが、海の水を吐き出すと、男の子は、みえなくなりました。

 お兄さんが、男の子を殺しただろうと、首を切られそうになりますが、母に別れを告げたいと二番目の兄さんが首を切られることに。

 ところが二番目のお兄さんの首は鉄でできていて、かたなではきることができません。

 こんどは海の中に放りこまれて殺されそうになりますが、母に別れを告げたいと、三番目のお兄さんが海の放り込まれますが、このお兄さんはどんどん足をのばし、波の上でにこにこしながら ういていました。

 四番目のお兄さんは体が焼けない、五番目のお兄さんは、いつまでも息をしないでいることができるので、「これは きっと おまえが、わるいことを しなかったからに ちがいない」と、許されます。 

 一番目のお兄さんが海の水をはきだしそうになり、ほっぺをふくらまし、必死に耐えるようすや、三番目のお兄さんの足が海底につくまでのようすが見所です。

 原因となった男の子が絵に描かれていないのは、亡くなったことを象徴しているのでしょうか?

 

七人のきょうだい(銀のかんざし/世界むかし話 中国/なたぎりすすむ・訳/ほるぷ出版/1979年)

 九人、五人があったら七人がでてきてもおかしくありませんが、絵本と同じように、とんでもない能力をもった七人兄弟の話です。


 力太郎、風次郎、鉄三郎、寒四郎、足長五郎、大足六郎、大口七郎と、こちらも表意文字のおかげで、説明抜きで、きわめてわかりやすい兄弟。

 おじいさんから、高い山と広い海があって、不便でしょうがないといわれ、山は平らに、海は埋めてしまった兄弟。
 この土地で麦や雑穀をうえると、みごとな穀物が栃一面に、びっしり育ちます。

 これに目をつけた皇帝が年貢を出せと命じます。年貢を出せば、どんなに水をいれても、一滴のこらず吸い込んでしまう枯れ井戸とおなじで、もう一生、牛や馬みたいにこきつかわれる、とおじいさんはなげきます。

 七人兄弟は皇帝に掛け合うため、城にでかけます。

 力太郎は、鉄のかんぬきを通した城門をおして、見張り台もろとも崩してしまいます。
 アリも通らないほどの午朝門は風次郎が、ふき倒してしまいます。
 将軍が鉄三郎の腕を刀で、切ろうとしますが、逆に刀が粉々に壊れてしまいます。

 皇帝が、兄弟を焼き殺そうとしますが、寒四郎は、火を消してしまいます。
 海でおぼれ死にさせようとすると、大口七郎が一口で海の水をすいこんで、城にはきだすと、皇帝から大尽から役人まで全部海の水が飲み込んでしまいます。

 昔話に、とんでもない能力をもつ人間が出てくるのは、そんな力があったらという願いが込められていたのでしょう。

 同じような話では、とんでもない能力をもつ人間が、主人公のおともをするのが普通ですが、この話ではあくまで兄弟が主人公です。


金のとさかのおんどりと魔法のひきうす・・ロシア

2020年04月09日 | 昔話(ヨーロッパ)

              ロシアの昔話/内田莉莎子:編・訳/福音館書店/2002年

 

 おじいさん、おばあさんが、えんどうまめを食べていて、豆を一粒うっかり床に落とすと、そのまめがころころころがって床下に落ちてしまいます。

 そのまめが、きゅうに芽を出すどんどんのびて、おじいさんが天井に穴をあけると、とうとう空まで。

 ふしぎなまめの木のまめをたべたくなったおじいさんが、まめの木をのぼって、雲の上にとまっていた金のとさかのおんどりと、金のひきうすをかかえ小屋までもどりました。

 金のひきうすをくるっとまわすと、パンケーキとパイがころがりだします。もういちどまわすと、またパンケーキとパイがころがりだしました。

 それからおじいさん、おばあさんは食べ物の心配もなく、暮らせるようになりました。

 ある日、旅の途中の殿さまが、食べ物をもとめてきたので、おじいさん、おばあさんは、パンケーキとパイをお皿に山盛りにして食べさせてあげました。

 殿さまは、ふしぎなひきうすを売ってくれるようたのみ、ことわられと、こっそりとひきうすを盗み出し、逃げ出します。

 ここから金のとさかのおんどりが、ひきうすをとりもどすため、殿さまの屋敷までとんでいき、「こけこっこう。殿さま、殿さま、金のひきうすをかえせ、かえせと」大声で叫びました。

 おんどりは井戸の中にほうりこまれますが、井戸の水をすっかりのみほします。

 また、大声で叫んだおんどりは、こんどはストーブの火になげこまれます。するとおんどりは水をはきだし火を消してしまいます。

 殿さまは、またまた、大声をだしたおんどりを「ずたずたに切ってしまえ」と、家来に命令しますが、おんどりは殿さまの頭にとびのってつむじをつつきはじまます。殿さまが逃げようとしても、おんどりは、すっかりと頭にとまって、さんざんこらしめ、ひきうすをつかんで おじいさん、おばあさんのところへ、とんでかえりました。

 そんなことができるのと突っ込みたくなるところがいっぱいですが、そこは昔話ですから、そのままうけとめてもよさそうです。おんどりが大声で叫ぶところが三回続き、これがとてもリズミカルです。幼稚園・保育園むけでしょうか。

 ただ、殿さまという訳は、やや違和感もありました。


1つぶのおこめ

2020年04月08日 | 絵本(外国)


    1つぶのおこめ/デミ・作 さくまゆみこ・訳/光村教育図書


 子どもたちが、数字の不思議さを理解できる絵本。
 「インドのさんすうのむかしばなし」という副題がついています。

 飢饉がきても、たっぷりためこんだ米蔵のおこめをわけあたえない王さま。

 村娘ラーニが、お米をはこんでいる象が落としたお米を王さまのところにもっていくと、感心した王さまが、ほうびをあげようというと、ラーニは、今日は、お米を1粒だけ、あしたは2粒だけ、3か目は4粒というように、30日のあいだそれぞれ前の日の倍の数だけお米をいただけませんかという。

 はじめは、欲がないとおもっていた王さま。

 しかし、30日後には、10億粒にも。

 お米を入れた袋をはこぶラクダの数がどんどん増えていって、30日後、観音開きになっているラクダの多さが圧巻。

 作者がインドの方とおもったらインドの大学にも学んだというアメリカの方。細密画でインドの雰囲気がでています。

 日本にも豊臣秀吉、曽呂利新左衛門や一休さんに同じような話があります。

 

 新型コロナウイルス感染で、この絵本を読んだことを思い出しました。感染爆発するととんでもない数に。外国の例もあります。自覚しなくても感染しているかも、指数関数的に増えると いわれても実感がわかないのが、実際計算してみると まったくやっかいな新型コロナウイルス。

 予防や有効な治療薬は、まだ時間がかかりそうなので、今回の緊急事態宣言でどこまでおさえられるか。                 


おおかみと子やぎたち・・ロシア、オオカミと七ひきの子ヤギ・・グリム

2020年04月06日 | 昔話(外国)

オオカミと七ひきの子ヤギ(グリム)

 留守番していた七ひきの子ヤギのところにオオカミがやってきて、子ヤギを食べてしまいますが、助かった一番下の子ヤギが、母ヤギといっしょに、ほかの子ヤギを助けるグリムの定番のお話。

 

おおかみと子やぎたち(ロシアの昔話/内田莉莎子:編・訳/福音館文庫/2002年)

 グリムと類似の昔話でした。(どちらが先でしょうか)

 ロシア版では、歌う場面がグリムより多く、リズム感があるようです。

 おおかみが子やぎに目をつけるのは、母やぎの歌を聞いてから。

 声が違うといわれたおおかみは、鍛冶屋でのどのうちなおしをします。グリム版はチョークで声をかえ、白い粉で足を白くします。

 グリムではおおかみのおなかを切り開くと子やぎがおなかからでてきますが、ロシア版では、おおかみのおなかが、たき火でもえて、子やぎがでてきます。

 グリムでは七ひきの子やぎが あちこちにかくれますが、ロシア版では、隠れる間もなく飲み込まれます。

 <母やぎが嘆く場面>

 ああ ああ だいじな ぼうやたち

 ああ ああ わたしの 子やぎたち

 どうして かぎを あけたりしたの

 おおかみなんかに だまされたの

 曲を工夫すると母やぎの悲しみがつたわるようですが・・・。


ねずみ女房

2020年04月04日 | 絵本(外国)

    ねずみ女房/ルーマー・ゴッデン・作 ウイリアム・ベーヌ・デュボア・画 石井桃子・訳/福音館書店/1977年

 

 バ-バラ・ウイルキンソンさんという一人暮らしの婦人の家に、家ねずみの夫婦がすんでいました。

 めすねずみは、ほかのねずみのすることは、みんなしていました。でも、まだいまもっていない何かが ほしかったのです。

 家ねずみの夫婦は、この家を全世界だと思っていました。春になると庭にはスノードロップやりんごの花が見え、森にはブルーベルが咲きました。夏はバラ。

 めすねずみは窓ガラスをとおしてみていました。けれど、そういうものが何なのかわかりませんでした。

 ある日、男の子がきじばとを一羽ウイルキンソンのところにもってきました。ウイルキンソンは、居間の棚の上の鳥かごにいれました。

 はじめは何かおそろしいとおもっていためすねずみでしたが、いつか きじばとの食べ残しの豆を食べるようになりました。きじばとが、めすねずみをすこしも気にしなくなったのです。

 いつかはととめすねずみは会話するようになります。丘のことや麦畑、雲のこと。飛ぶっていうのも知らないめすねずみでしたが、ふしぎに心を動かされます。

 ある日、めすねずみは、巣にいっぱいになるほどの子どもを産みました。めすねずみは、赤ん坊のことだけしか考えられませんでした。それでも、おなかがすいて豆が欲しくなり、窓じきいにのぼっていきました。はとはめすねずみと話したくてたまりませんでした。

 めすねずみはいそがしくて、はとのところにはなかなかいけませんでしたが、こうこうと月のさす夜、ねむれなくて はとのところにでかけました。

 突然、めすねずみは森の木の梢を見て、はとは木々や庭や森の中にいなければと、さとります。そして鳥かごの戸をあけると、はとは何も言わず、すぐはばたいて木々をこえてとんでいきました。しかし、めすねずみは、はとが飛び去った窓からごくわずかなねずみにしかできない星を見ることができたのです。

 

 一生鳥かごからでられないとおもっていた、きじばとは、いつか森のなかを 飛んでいるのを夢見ていたのでしょう。

 めすねずみは、きじばとを外にだしてあげたあとも、やっぱり家ねずみでした。けれども、はとから何かをもらいました。

 でてくるおすねずみは、おくさんを家に閉じ込め、暴力をふるったりと、時代を反映しているようです。


ふくろうくん

2020年04月02日 | 絵本(外国)

    ふくろうくん/アーノルド・ローベル・作 三木卓・訳/文化出版局/1987年

 

 ふくろうくんの一人芝居?風の話が五つ。大人から見るとなんでこんなことに悩むのかとつっこみたくなるのですが、ふくろうくんが、まじめに悩む様子がほほえましい話ばかりです。

<おきゃくさま>

 ドアをたたく音が何回かして、ドアを開けてみると雪と寒さだけ。「かわいそうな 冬が げんかんたたいていたんだな。きっと だんろのそばに すわりたいんだ」と、ふくろうくんが、ドアをあけると、ふゆがあばれまわり、暖炉の火を消し、食べていた おまめのスープも こちんこちん。

 ふゆが でていくと「にどど もどってくるなよ!」と、ふくろうくん。

 そして 暖炉に火をおこし、スープも あたたかく。

 冬をお客さまにするなんて! ふくろうくん やさしいですね。

<こんもりおやま〉

 ベッドに入ったふくろうくんが眠ろうとした時、毛布の下にこんもりしたものを 見つけました。

 「このへんな こんもりくんは なんだろうな」「もし、ぼくが寝ているうちに、ふたつの こんもりくんが どんどん おおきくなっちゃったら どうだろう?」

 右足、左足をあげたり、さげたり。

 たんに、自分の足だったのですが・・・。

<なみだのおちゃ〉

 涙でお茶を入れることにしたふくろうくん。悲しかったことを次から次と考え、涙が少しづつゆわかしきに。悲しいこともいろいろです。

〈うえとした〉

 ふくろうくんの家は2階建て。1階と2階をつなぐ階段は20段。1階の茶の間にいる時は上が気になり、2階のベッドのいる部屋にいると、下が気になるので、何とかいっぺんに上と下にいられる方法はないかと考え、階段を大急ぎで上り下りしはじめるのですが、もちろん なんどやっても できません。

 ふくろうくん ごくろうさまの一言です。

 〈おつきさま〉

 ある晩、海辺に出かけたふくろうくんが 海の波を見ていると お月さまが 海の向こうから 顔をだしました。

 「ぼくが きみを みているんだから きみも ぼくを みなさいよ。おともだちにならなくちゃ ぼくたち」って言っても、返事はありません。

 でも、お月さまはふくろうくんと、ずっと一緒。

 ふくろうくんは、ついてきちゃだめだよとお月さまにいいますが、月が雲にかくれてしまうとしょんぼり。「ともだと さよならするのは いつでも ちょっぴり かなしいことだなあ」

 どこまでいっても、月が一緒という感覚は、確かに不思議といえば不思議です。

 

 いちどふれたことがありますが、おくさんも絵本をかかれています。アニタ・ローベルさんは1934年生まれ。1944年ナチスドイツに捕まえられ、強制収容所へ。奇跡的に助かり、アメリカへ渡り、アーノルド・ローベルと結婚しています。


絵本東京大空襲

2020年04月01日 | 絵本(社会)

    絵本東京大空襲/早乙女勝元・作 おのざわ さんいち・絵/理論社/1983年第16刷

 

 1945年3月10日零時8分に江東区におとされた焼夷弾。空襲警報がおわったのは2時37分。

 100万人あまりが家を焼け出され、死者はおよそ10万人といわれる東京大空襲。

 早乙女さんが娘さんにかたりかける形で、その日、たくさんの焼死体をトラックで運んだという おのざわさんが絵をかかれています。

 川に公園、運河、橋の上が黒焦げの死体が、ぎっしりうめつくす光景。 

 これ以外にも戦争の惨禍は、いたるところにありますが、忘れてはいけないものの一つ。

 アメリカなりの理由があるのでしょうが、しかしだからといって無差別大量虐殺が許されるはずはありません。

 戦争のもたらす悲惨さを語り継ぐためにも、一度は読んでおきたい絵本です。