山形のむかし話/山形とんと昔の会・山形県国語教育研究会/日本標準/1978年
口から口へ伝承されてきたという昔話。何世代か伝承されてくると、骨格の部分は同じでも細かなところがちがってきてもおかしくはない。そして、いくつかの昔話がつなぎ合わせたものがあっても不思議はない。これはそんな話。
ばあさが川さどんぶりを洗いに行くと、川上から赤いこん箱(香箱)と、白いこん箱がながれてきたど。ばあが、「赤いこん箱、こっちゃ来い。白いこん箱、あっちゃいけ」というと、赤いこん箱が、にこにっことばあさのところに流れてきた。(桃太郎風出だし)
赤いこん箱からでてきたのはめんこい子犬。お椀で食わせればお椀ぐらいの大きさに、どんぶりで食わせればどんぶりのおおきさになった白犬。ある日、じいさまとばあが、白犬のせなかにのって山へ行くと、「ここほれ、カンコーカェン、あそこもほれ、カンコーカェン」という。じさまとばあが土を掘ってみると宝物がざくざく。この話を聞いたとなりのじいがやってきて、「しろば、ちょっと貸してけろ」という。貸してくれないと殺してしまうといわれ じいさまは、貸してやったど。
となりのじさまは、いやがるしろを山に連れていき、めちゃくちゃにそのへんを掘り返したが、でてくるのは石っころやくそなど。おこったじいはしろば殺して、穴を掘ってうめ、ちっちゃな松の木をそのうえに植えて、かえってきたど。
じいさまがしろをかえしてもらおうと、となりのじいのところにでかけ、松の木のところに行ってみると、松の木は、すばらしい大木になっていたと。じいさまは、しろのことはあきらめて、松の木を切ってうすをこしらえ、もちをついてみると、もちは大判小判に変わったど。
となりのじいが、うすを借りて、自分も大判小判をだそうとすると、もちはみな汚いものにかわってしまったので、うすを割って、かまどに燃やしてしまったど。(花さか爺風)
しかたがないので、じいさまが灰をもちかえり畑にまくと、畑一面にヒョウができたので、じいさまとばあは腹いっぱい食べたど。
じいさまが”へ”をこくと、そのへは「綾ちゅうちゅう 錦さらさら ごよの股のあいだから ツツラブンバンビー」と聞こえたど。めずらしい屁だからと、旦那衆に聞かせると旦那衆はおおよろこびで宝物をくれたど。
となりのじいも、おなじようにやってみると・・・。(鳥呑み爺風)
ヒョウというのがどんなものかイメージできないないのが残念ですが、サツマイモやカボチャならわかりやすそうです。