2ひきのジャッカル/愛甲恵子・再話 アリレザ・ゴルドゥズィヤン・絵/玉川大学出版部/2021年
8世紀中ごろのペルシャで生まれた物語集「カリーラとディムナ」に収められている「ライオンと牛」をおもな土台としているとあとがきにあります。由来をたどると、さらに古代インドの説話集までさかのぼれるようです。
人間の荷物をはこんでいたシャンザバという牛が、森の近くでぬかるみにはまり、おきざりにされました。シャンザバはひどくよわってしまいましたが、なんとか ぬかるみから はいでると 草を食べて、すこしずつ元気になりました。ある日、さびしさをまぎらわそうと、さけびごえをあげました。そのこえは あまりにも大きく、空からふってくるようだったので、森の動物たちは ふるえあがりました。なかでも いちばん こわがったのはライオンでした。ライオンは 森の動物の王さまですから ほかの動物に弱みをしられるわけにはいきません。
いつも王さまに好かれたいとおもっていたジャッカルのディムナは、ライオンの様子をみてウシはこわくないことを うやうやしく はなし どうしたらいいか進言します。
ウシは まもなく ライオンの 一番の親友になります。
ウシの怖くないことをはなし、ライオンに 好かれたいとおもった思惑が外れたディムナは、ライオンには、「ウシが王さまにとってかわろうとしている」 ウシには、「ライオンがきみのこと 食べようとしている」と 両者に吹き込みます。
ディムナのいうことを本当だと思った両者の闘いの結果、ウシは死んでしまいます。あとから本当のことを知ったライオンは ディムナを 森から 永久に 追放します。
力のあるものに取りいろうとする面々が、あの手 この手で 策をめぐらすのは、人間の世界でも同じ。いわれたことを簡単に信じてしまうのも考え物です。ただ2ひきジャッカルとあるように、もう一匹のジャッカルは権力に近づくなと忠告していました。
絵ではライオンより存在感があるのが荒々しいウシ。線を生かした山や谷の描き方にも特徴がありました。