どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

地主の花嫁・・ノルウエー

2024年03月18日 | 昔話(北欧)

   ノルウエーの昔話/アスビョルンセン ヨーレン・モー 米原まり子・訳/青土社・訳/1999年

 

 広大な領地をもっている地主だったが、一人暮らしで何か物足りなかった。ある日のこと、近くの農場から来ていた娘をみてすっかり気に入り、少女に「あんたをわしのよめさんにしようとかんがえておるんじゃよ!」と言った。

 少女は「いやですわ! でもまあ、ありがとうございます!」と答えたが、そんな日が来ることは決してないだろう思った。しかし、地主は「いやだ!」などという言葉を聞くのに慣れていなかった。そして少女が嫌がれば嫌がるほど、彼の方ではますます思いをつのらせていった。少女と話していたのではいっこうに事がはかどらないので、少女の父親を呼んで、もし娘と結婚できるように取り計らってくれたら貸した金のことはわすれてやろう、そのうえ、牧草地の横の土地もおまけにやろうと付け加えた。

 父親はその話を娘にしたものの、やさしく言おうと、きつく言おうとどちらにしてもなんの役にも立たなかった。少女は、たとえ地主さんがとほうもないほどの金持ちでも結婚しませんというばかり。

 地主は来る日も来る日もまっていた。けれどだんだん腹がたってきて、がまんしきれなくなって、約束を守るつもりがあるなら、さっさと一発殴りつけたほうがいいぞと、言ったのだ。父親はこう答えた。地主さんとしては、婚礼の支度をすべて整えて、牧師さんや結婚式の客たちが集まったところで、なにかしなければならないよう仕事があるようなふりをして娘を呼びつけるんです。娘がやってきたら、心を落ち着かせる時間を与えず、あっという間に結婚せにゃならんようにするんですな。

 地主は、これはとてもいい考えだと、召使に命じて、結婚式の準備を万端抜かりなく整えさせた。婚礼に招かれた客がやってくると、召使の少年に、急いで農場の隣人宅にいって、約束したものをよこすようにさせろ、と大声で命じた。少年が隣人宅にいくと、「あの子は、牧草地にいるから連れて行ってくれ」と言われ、牧草地にいた少女を連れて行こうとするが少女は騙されません。「約束したものって、あの小さい雌馬のことじゃなくて?あのこを連れていくことね」と答えます。

 召使の少年は、雌馬にのってもどり、地主から「あの子をつれてきたか?」と聞かれると「扉のそばにたっています」と答えました。母の部屋だったところへつれていけ!と地主からいわれ、とやかくいっても無駄だと悟った少年は、召使たちみんなと雌馬を階段を上らせ、寝室まで連れて行った。つぎに「女たちをいかせて、あの子に花嫁衣裳を着させるんだ」といわれ、「でも、そんな!」と言いますが、つべこべいうなといわれ、召使の少女たちに声をかけ、小さな雌馬に花嫁衣裳を着せ、準備が整いましたと、報告しました。

 地主がみずからで迎えようとすると、地主の花嫁は大広間にはいってきました。居並ぶ婚礼の客たちは全員こぞって、どっと笑いだした。

 地主はその花嫁のことがあんまり気に入ってしまったので、それ以来二度と求婚しようとはしなくなったのだということだよ!。

 

 少女の心のうち・・醜い年寄りなら、結婚なんかよりももっとふさわしいことを考えればいいのに・・


ぽつぽつぽつ だいじょうぶ?

2024年03月17日 | 絵本(日本)

    ぽつぽつぽつ だいじょうぶ?/しもかわら ゆみ/講談社/2017年

 

 雨の絵本ですが、でてくるのが動物。毛一本一本繊細に描かれた動物、雨の様子が繊細です。

「ぽつ ぽつ ぽつ」 ふってきたら、ねずみさんはキノコ。
「ぱら ぱら ぱら」 ふってきたら、うさぎさんは、大好きなニンジンの葉っぱ。
「さら さら さら」 ふってきたら、きつねさんとたぬきさんは けんかを やめて 相合傘。

「ざあ ざあ ざあ」 ふってきたら、くまさんは 木の葉っぱ

 かえるさんは 雨がふってきても 傘などいりません。

 風が吹いて 雨がやむと みんなで みずたまりに ジャンプ。

 

 土砂降りは嫌ですが、小雨ならどうでしょう。カンカン照りのとき、雨は恵みにもなります。


とまがしま

2024年03月16日 | 紙芝居

    とまがしま/脚本・桂文我 絵・田島征三/童心社/2004年

 

 殿様の帰りを土下座しているまっている人たちのなかに、鼻血をだしている たけやんがいました。鼻血をだしていると怒られると、鼻血をとめるおまじないをしたのは まっちゃん。首すじの毛を三本ぬくと、本当に 鼻血がピタッととまりました。

 さて、殿様は、とまがしまに怪物がいると聞いて、さっそく船で 退治にでかけました。空にはおおきなワシが ゆうゆうと とんでいて だれかを狙っているようでした。家来が鉄砲を撃ちますが、弾は届きません。家来たちが 悔しがっていると 突然じめんがゆれ、近くにあった木の切り株が パカッと二つに割れると、太くて長い おおきなヘビがあらわれました。おおワシが、おおヘビに むかって おりてきますが、おおワシは めまいをおこし、海の中へ 沈んでしまいました。それから おおヘビは 殿様めがけて ちかづいてきました。そのとき若い侍が、「おおヘビ、しょうぶだ!」と飛び出し、おおヘビの口に刀をはめこみました。口がふさがらなくなったヘビが、侍を グルグル巻きにして、絞め殺そうとすると、侍は右のヤリを ヘビの 鼻を グサッと 突き刺しました。そのとたん、おおヘビの鼻から、鼻血がブワーッと噴き出しました。

 侍は ちょっと用事を思いだ出したと、逃げようとするおおヘビの背中に とびのり、首すじのウロコを つかみました。「にがしてくださいな。」「にがさんぞ!」とやっていると、おおヘビの 首すじの ウロコが 三枚 ビュッと ぬけました。そのとたん おおヘビの 鼻血ガ、ピタッと とまりました。

 

 ”とまがしま”は無人島。田島さんがえがく おおヘビは迫力満点。ただワシは、出番も少ないうえに いまいちでしょうか。

 鼻血がとまるのは はじめとおわりでつながってはいますが やや強引です。


なみなみのへっぴりじじ・・岩手

2024年03月15日 | 昔話(北海道・東北)

    岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 ”へ”の話もいろいろ。

 正直で一生懸命働くずんつぁが、長者どんの山で、パッカパッカ木を切っていると、長者さまに見つかって、「そこで木を切るやつ。どこの何者だあっ」と、大きな声で叫ばれた。

 「なみなみのへっぴりじじでがす」というと、長者は「こごさきて聞かせろ」という。ずんつぁは、「へっつーものに、ポー、ピー、スーと三いろあって、スーと出るのがいちばんくせいが、このじじのたれるのは音っこのほうでがす。一番大きいのは、てっぽう玉へで、つぎは太鼓へ、そのつぎははしごへです」といったれば、長者が「みんなたれてみろ」という。

 ずんつぁは、まずドカンとてっぽう玉へをやらかして、つぎに太鼓へでポンポンポン。それからブー、ブーと二回たれてはしごへ。

 よろこんだ長者が、「宝物をやるが、重いほうがいいか、軽いほうがええか」というので、ずんつぁは、「年とって、力もねえから、軽いのもらっていきます」といって、軽いほうをもらって家に帰った。軽いかごには、きれいな着物だの、米だの、おさかなだの、ぜにっこが たくさん出はってきた。

 つぎの日、となりのばあさまが、火のたねっこもらいにきて、「なんで、赤い着物着て、うまいものくってませ」と聞かれたから、長者どんの家からもらってきた」と語って聞かせると、となりのずんつぁも、長者のところで、”へ”をたれることになりますが・・・。

 

 「となりのずんつぁが、重いかごをもらってかえると、なかからでてきたのは きたないものばかり」というのは、「隣の爺」型の終わり方です。


へダルの森でトロールに出会った少年たち

2024年03月14日 | 昔話(北欧)

     ノルウエーの昔話/アスビョルンセン ヨーレン・モー 米原まり子・訳/青土社・訳/1999年

 トロルは、北欧ではかかせない存在。ただ話によってイメージがかわってきます。

 

 兄弟が、鷹匠がどんなふうにし鳥を捕まえるか見てみたいとヘダルの森へ出かけた。ところが秋も終わって、兄弟は休む場所を見つけられず、森の中で道に迷ってしまった。二人は小枝を集め、火をおこして、松の枝で夜の宿にする仮小屋をこしらえた。

 横になっていると、くんくんというひどく大きな鼻息が聞こえてきた。兄弟は耳をそばだて、その音が動物たちなのか、話に聞いたことのあるトロルなのか一心に聞きとろうとした。すると、さっきよりも激しく鼻をならし、「ここはキリスト教徒の血の匂いがするぞ!」という。

 大地を踏みつけるひどく重そうな足あとが聞こえ、あらわれたのはトロル。トロルはモミの木のてっぺんにとどくほどで、三人で一つの目玉を持っていた。トロルの額にはそれぞれ目玉をいれる穴が一つづつで、先頭を行くトロルが目玉をつけ、あとの者は、しっかり前の者にしがみついていた。兄はトロルの最後尾にまわり、足首を手斧で切りつけたものだから、トロルはおそろしい悲鳴をあげた。すると先頭のトロルがびっくり仰天して跳びあがり、その拍子に目玉をすとんと落としてしまった。兄はすかさず目玉をひろいあげた。目玉を取られ、仲間のトロルが傷つけられてしまったトロルは、目玉を返さないなら、ありとあらゆる不幸がふりかかるぞと兄弟を脅しはじめた。

 兄弟が、そっとしてくれないなら、あんたたち三人ともきりつけてやると言い返すと、トロルはおびえ、目玉を返してくれるなら、金と銀、それにほしいものは何でもあげるからと、愛想よく言いました。兄弟は金と銀を荷物袋いっぱいにして、すばらしい鋼の弓二本くれるなら目玉を返そうといいます。トロルは目玉がないので歩くことができないと、トロルの一人が妻に大声でよびかけました。トロルたちは三人で一人の妻をもっていたのです。

 妻は事情を知ると魔法をかけてやると、兄弟を脅しますが、トロルのほうがもっとおびえてしまい、妻も自分の目玉を取られることが絶対にないとは思えなかったので、金銀と鋼の弓を兄弟に投げつけると山の家に帰っていった。

 その時以来、へダルの森でキリスト教徒の血を求めて鼻をならしてかぎまわるトロルたちのことを耳にする者は、絶えてなかった。

 

 妻も、一つの目玉も三人で共有するユニークなトロル。だれも目玉を占有しようと思わない信頼関係が素晴らしい。人間にはできそうもありません。


おにとあんころもち

2024年03月13日 | 絵本(昔話・日本)

   おにとあんころもち/おざわとしお・くのあいこ・再話 半田強・絵/福音館書店/2017年1月号「こどものとも」発行

 

 おかあが太郎の七つの祝いに あんころもちを つくったて。太郎があんころもちを食べようとすると、三つ目のあんころもちが、ころころころころ にげていっちゃうげな。太郎が追いかけていくと、山道をくだって のぼって やまの真ん中にある穴の中へ。穴の中には鬼がいて、あんころもちは鬼の大将の おなかのなかへ。鬼の大将は、ほんとにうまかったと、あんころもちを つくるよう 鬼たちへ命令。鬼たちは、大将の口元についとった あんこを とって、すり鉢の中へいれると、すりこぎで くるくるくる。ほのつぎに、大将の奥歯にはさまっとった 餅をとって また すりこぎで くるくるくる。あんこも餅もいっぱいになって、はらいっぱい くった。

 鬼がみんな眠ってしまったのをみて、太郎は逃げかけたが、すりこぎを もってかえろうとすると、ちょうど目を覚ました鬼に見つかってしまった。

 太郎が逃げて逃げていくと、川があってそこに船があった。船にとびのり、すりこぎをこいで逃げ出すと、鬼たちは、川の水を飲みだした。鬼が水を飲むと、太郎の船は 鬼の方へ流される。つかまっちゃいかんと、漕いでいたすりこぎを くるくるくる まわすと、川の水が ぶくぶく ぶくぶく ふえだして 鬼たちがいくら飲んでも飲みきれない。

 鬼のすりこぎを 家にもちかえった帰った太郎が、すりこぎを 米櫃に入れて、くるくるくる まわすと みるみる 米櫃は お米でいっぱい。そのあと、おかあと太郎は、いつでも お米が食べられるようになって、いっしょう しあわせに くらしたげな。

 

 鬼の絵も とってもユニーク。三つ目は大将、一つ目もいます!

 愛知県西三河の再話で、出典も明記されています。


なんじゃもんじゃはかせの おべんとう

2024年03月12日 | 絵本(日本)

    なんじゃもんじゃはかせの おべんとう/長 新太/福音館書店/2023年第3刷(初出1993年)

 

 なんじゃもんじゃ博士と友だちのゾウアザラシが、お弁当を食べようとしたら、へんな木が「お弁当をちょうだい」とやってきました。くるわくるわオバケノの木。大急ぎで逃げだした博士たちは、がけから川へ落ちてしまいます。

 一難去ってまた一難、川の中には、博士たちの百倍以上の 大きいエビ。「お弁当だ。お弁当だ!」と叫ぶエビに、博士がお弁当のエビフライを グイッとエビに見せると、エビは、「ワーッ ごめんなさーい! エビフライにしないでちょうだーい」と、いってしまいます。

 ところがこんどは、ジャガイモのお化け。博士がお弁当のコロッケを グイッとみせると「ワーイ コロッケに しないでちょうだーい!! 」と、逃げていきました。

 ブタの鼻のお化けには トンカツを みせて 撃退。

 博士たちは ようやく だれもきそうにない 広い ところで ゆっくりお弁当です。

 

 揚げ物だけ!と心配される方もご安心。裏表紙の見返しに弁当の中身があって、スパゲッティ、パン、おにぎり、ソーセージ、サンドイッチ、サラダ、ジュースまで入っているので、揚げ物以外で お化け撃退できそうですよ!

 超(長!長!)斬新な着想の長ワールドです!


字はうつくしい

2024年03月11日 | 絵本(日本)

   字はうつくしい/井原奈津子:文・構成/福音館書店/2023年(月刊たくさんのふしぎ)

 

 ときどき手書き文字の絵本があって、そこには作者の思いがこめられていて、活字体にはないぬくもりを感じます。

 いまはほとんど手で書くことがなくなり、たまに書くと漢字が思い出せないことも多い。

 習字教室を開いているという作者の「わたしの好きな手書き文字」への思いが込められていて、あらためて文字のことを学ばせていただきました。

 有名人の手紙や普段何気なく見ている街角で見られるポップや喫茶店のメニューから、手書き文字の歴史まで。

 読めなくてもうつくしいという藤原定家の字。当時、本は写本でつくられ、なんどもなんども書き写していたので、その人独自の書き方ができあがったのでしょう。

 

 折り込みに、「飛鳥から令和ひとっ飛びー日本の手書き文字1500年」には、56種類の書が掲載されていて圧倒されました。

 

 かな、カタカナ、漢字と、他の国より多様な表現方法がある日本語。漢字圏以外の国に、「書」があるでしょうか。アルファベットやアラビア文字の書というイメージは うかびません。


あざみ姫の首・・岩手

2024年03月10日 | 昔話(北海道・東北)

    岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 五助という男が、きくという妹といっしょに山の中に暮らしていたが、きくが遊びにいってから なかなか帰ってこない。つぎの日の朝はやく探しにいくと、きくの下駄が落ちていた。ようやく山のおくの、大きな岩のなかに、きくをさがしあてたが、そこにはおおきな山男がいて、「あざみ姫の首持ってきたら、きくをわたしてやる」という。山男には勝てそうもないと、家に帰ってきたが、山男がいう、あざみ姫の首が気になっていた。

 何日かたって、ぼろぼろの着物のおじいさんが、「今晩ひと晩とめてけろ」という。食べ物などはいらないから泊めてくれといわれ、五助は、おじいさんを泊めることにした。五助が、いなくなったきくのことを話すと、おじいさんはあざみ姫のことを話し、いつのまにか姿を消してしまった。

 五助は、これはきっと神さまが教えてくれたに違いないと、夜が明けると、東の方へ歩いて行った。すると、きれいな小鳥が鳴いている一軒の家に、ばあさんがいたので、おじいさんから教えてもらった「岩切丸」という刀を貸してくれるよう頼みこみ、刀を借りて、また東へいった。

 沼のそばにあった切株にこしかけていると、神さまみたいなのが鏡みたいなものをもって沼からあがってきた。「かしてけれ」「かせねえ」「かしてけれ」とやりあって、鏡を借りた五助は、岩切丸と鏡をもって、あざみ姫のいるところへむかった。

 ずんずんいくと、岩山のおくへ大きな御殿があって、そこらじゅうに大きな石ころがごろごろころがっていた。この石はあざみ姫ににらまれて、石になった人石だった。五助はあざみ姫ににらまれないよう、鏡を見ながら後ろ向きに歩いていくと、足までとどく髪をして、それはそれはぞっとするようなきれいなおひめさまが、鏡にうつって見える。そばにつかずくと、一本一本の髪の毛がヘビになって、赤い舌をだしながら、五助にかかってきた。五助は、きくのことを思い、腹決めて、あざみ姫の首へ、岩切丸をたたきつけると、首がおちて、真っ赤な血が流れ、湯気のようにもやもやになると、あたりは、真っ赤な霧が かかるようになった。そのうち、その霧は馬のようになり、ぴょんととびあがって、しばらくするとあたりは晴れて、そこらじゅうあかるくなってきて、その山一面きれいな花が咲いた。

 御殿も人石も消えて、五助は馬といっしょに、あざみ姫の首をもって山男のところへいって、きくを家に連れて帰った。

 

 山男がなぜあざみ姫の首がほしかったのかは全く出てこないほか、ぼろぼろの着物のおじいさが なぜあざみ姫のことをおしえてくれたかもでてきません。さらに岩も切るという岩切丸や、あざみ姫と直接目を合わせないための鏡もとつぜんでてくるなど、戸惑う部分もある話です。


人形からとどいた手紙

2024年03月09日 | 絵本(外国)

   人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ/ラリッサ・トゥーリー・文 レベッカ・グリーン・絵 野坂悦子・訳/化学同人/2023年

 

 副題に「ベルリンのカフカ」とあるので、あの作家のカフカ?と思いながら読みはじめました。

 カフカと恋人のドーラが公園の散歩中、人形をなくしたというイルマにあいます。悲しんでいるイルマに、人形のスープシーは、ちょっと旅にでたんだと語りかけたカフカ。人形の手紙をあずかる郵便屋となのり、このあと人形からあずかったといって手紙をイルマにわたします。

 一通目は1923.10.23の日付で、冒険の旅に出たという手紙。つぎの日はハイキングして山にきた。そのつぎの日はパリ。好きなものだけ食べている。イギリスでピーターくんとお茶をしたこと。スペインのバロセロナでは、ガウディさんに建築の話を聞いたこと、エジプトのピラミッドをみたことが続きました。

 1923.11.8の手紙は、前より短くなりました。それからカフカは公園にあらわれませんでした。手紙のやり取りは公園でされていたのです。イルマはまちました。雨が降ってもまちました。

 イルマが、ドーラに尋ねると、「頭や目のおくが、ずっと痛い」が、「郵便屋の仕事をわすれたわけじゃないわ」と、1923.11.11の手紙をわたします。そこには、「南極に行くから、これで手紙は書けません。だから、これでさようなら」と書いてありました。

 もういちどイルマに会ったカフカは、旅に出るというイルマに、ノートとペンをもっていき、冒険の旅を毎日書き残しなさいといい、背筋を伸ばし、ほほえみます。

 そして、「これからたくさんあそんで、いつか冒険の旅にでる人」と「これから最後の旅に向かう人」は さよならをいって はなれていきました。

 

 生前のカフカのエピソードをもとに書かれた絵本。
 生前評価されることなく亡くなったカフカ(1983~1924)ですが、ただ一回の出会いから、少女を勇気づける手紙を着想した優しさに感動です。

 なんとなく敬遠していたカフカですが、これを機会に読んでみようと思いました。絵本であれ であいは貴重です。


におうと どっこい

2024年03月08日 | 紙芝居(昔話)

   におうと どっこい/泉さち子・文 西村達馬・画/教育画劇/1998年(12画面)

 

 日本一の力持ちを自称するにおうが、唐という国には どっこいという男がいて、におうよりも ずうんと 力持ちだと 村の人に言われ、唐の国で力比べをしようと、唐の国にわたりました。わたる前、おぼうさんから、こまったときに 役立つだろうと ヤスリをもらっていました。

 ひとりぶんの飯のおおさに、どもぎをぬかれ、逃げ出そうとするとすると、地震のような大きな物音。どっこいの足音と言われ、におうは 船で にげますが、どっこいがなげた、かぎのついた鎖がにおうの船にくいこみました。そこで、におうが、お坊さんからもらったヤスリで、鎖を切ると、そのひょうしに ドッシーン!とひっくりかえったのは、どっこい。そのとたん、大地震がおき津波がおきて、におうがのった船は あっというまに日本の岸へ 運ばれました。

 ヤスリをくれたのは、じつは八幡さまでした。におうは この後、八幡さまの家来として、門番になりました。ですから、いまでも、山門には 仁王さまが ぐっと にらみを きかせているのです。

 

 お寺にはいる門には、仁王様が立っていることが多いので、親近感がわきそうな紙芝居。ただ、対象年齢がだいぶ低く設定されているのでやむを得ないのですが、どっこいの 力がどのくらいか もう少しあった方がインパクトがありそうです。


ジョーンとあひる

2024年03月06日 | 絵本(外国)

 

   ジョーンとあひる/マーガレット・ロウ・作 松野正子・訳 津田櫓冬・絵/福音館書店/2023年(初出1998年)

 ジョーンとお父さんは毎週日曜 お昼から公園の池のあひるたちに餌をやりに行きます。
紙袋の中には、白いパン1かけ、茶色いパン1かけ、スポンジケーキ1かけ。毎週あひるに 餌をあげているので あひるは、姿を見たら すぐ 池からあがってきました。

 白いあひるには白いパン、茶色のあひるには、ちゃいろいパン、そして 赤ちゃんあひるには、スポンジケーキ。
 あひるたちは まだ食べたくてがあ!があ!があ!と鳴きます。もうちょっと ちょうだいといっているように。
 お父さんが、空っぽの袋を みせてやると あひるたちは、おしりを ふりふり 池へ帰っていきました。

 餌やりのあとは、おやつの時間です。

 

 とってもかわいい、白、茶、黄色のあひるでした。お父さんとジョーンの服と髪型は、そっくり。

 外国と日本の人のコラボ作品。


はい、タッチ

2024年03月06日 | 紙芝居

    はい、タッチ/脚本・絵 とよた かずひこ/童心社/2011年

 

 可愛らしい動物たちの グータッチの絵に おもわずほっこり。

 ねこさんとねこさんは 「こんにちわ」

 くまさんとくまさんは 「こんにちわ おひさしぶりー。」「こんにちわ。おげんきそうで、なによりなにより」

 へびさんは 「こんにちわ。あら、ふっくら されましたね。」「ありがとう。こんど ぬまのほとりで おしょくじでも しましょうね。」

 でっかい でっかい かいじゅうと ちっちゃなおててのたろうちゃんは 「ぼくたち なかよし!」

 

 へびとへびのタッチはどんな?

 

 幼児が楽しめそうな紙芝居。


愛しい人の贈り物・・ウクライナ

2024年03月05日 | 昔話(ヨーロッパ)

      世界の水の民話/日本民話の会・外国民話研究会:編訳/三弥井書店/2018年

 

 遠い昔、浜辺に住んでいたアザという娘が、とてもハンサムな若者を愛していた。ところが動乱の時期になり若者はトルコとの戦いにでていった。

 若者は戦争に出ていく前に金の指輪を渡して、「待っていてくれ、忘れないでくれ」「もしこの指輪をなくしたら、君の不実のあかしだ」と、いいのこします。

 娘は贈り物を大事にし、何年もずっと若者の帰りをまっていましたが、若者は戻ってきませんでした。

 あるとき、娘が海へ洗い物をしにいき、物思いに沈んでいて、指輪をするっと海に落としてしまいました。そこへいきなり波がきて贈り物は消えてしまった。哀れなアザは、大事な贈り物を取り戻そうと波に飛び込んだが、おぼれてしまった。

 いらい、海はアゾフー不幸な娘、愛しい人の帰りをまつことができなかった娘の名でよばれるようになった。

 

 このアゾフ海域はクリミア戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦など、多くの重要な歴史的出来事の舞台。いまは、ウクライナとロシアの戦争の最前線。古くは、ギリシャ、ローマ、ビザンチン、オスマン帝国などの影響を受けてきました。
 この地域には、ウクライナ人、ロシア人、クリミア・タタール人など、さまざまな民族が共存していましたが、いまはどうでしょうか。


ホットドッグ

2024年03月04日 | 絵本(外国)

    ホットドッグ/ダグ・サラテイ:作絵 矢野顯子/学研/2023年

 

 暑い夏、都会の喧騒をのがれて、飼い主の女性と向かった先は海。浜辺でいっぱいあそんだあとは、ベッドにもぐりこんで、海くらい ふかーくねむった ダックスフンド。

 シンプルですが、動画のように 絵がいきおいよく動く感じ。

 焼けつく道、工事や消防自動車のサイレン、人ごみの中を急に近づくローラースケートに 「もー やだっ! もう 1ミリだって うごいてやらないもん」と 横断歩道に座り込んだワンちゃん。大都会の様子は 縦長。

 タクシー、電車、船を のりついで ついた先は、自然がいっぱいの島。海と浜辺の様子は、横長。浜辺は2ページまるごと、ワンちゃんが走り回る様子は、1ページを4分割、夕日が沈むシーンは さわやか。

 ホットドッグが しあわせそうに 走り回るシーンが、印象的。

 でも明日は また暑そう。今度は どうするのかな? 浜辺で拾った石が、窓に並んでいるので、石が さわやかな風を 届けてくれるかな?。