「コロナ対策は失敗」 識者、経済政策にも注文 「あすを描く 参院選22」
15日に会期末を迎える通常国会は与野党の対決法案も少なく、盛り上がりに欠けた。参院選では政府のこれまでの新型コロナウイルス対策や岸田文雄首相が訴える憲法改正、当初方針から変遷し投資による所得倍増を目指すとしている「新しい資本主義」の在り方が争点になりそうだ。有識者に政権の評価を聞いた。
「これまでの政府のコロナ対策は失敗だ」と話すのは、東大の米村滋人(よねむら・しげと)教授(民法、医事法)。感染者が増減するたびに、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出したり解除したりと場当たり的な対応に終始し「惰性で飲食店の営業制限を繰り返した」と指摘する。
政府が創設を検討し、司令塔となる首相直轄の新組織についても、過去の政策効果の検証がないままでは無意味だと強調。「屋内でのマスク着用徹底などを改めて強く働きかけるべきだ。このままでは夏にかけて再び感染拡大が起こりかねない」と懸念した。
自民党は憲法9条への自衛隊明記を含む改憲や、弾道ミサイル攻撃に対処するための「反撃能力」を保有するよう主張している。日本総合研究所の藻谷浩介(もたに・こうすけ)主席研究員は「安全保障環境が悪化する中、わざわざ明記し声高に主張して、周辺国に疑念や軍拡の口実を与えることに何の意味があるのか」と批判する。
ウクライナ情勢に便乗するかのような改憲派の主張に対し「文言いじりは無益。防衛力強化は淡々と進めるものだ」と主張。防衛費増額も「金額ありきではなく、サイバー攻撃への対処など必要なことに費やすべきだ」と話す。
新しい資本主義で当初掲げた「令和版所得倍増」は「勤労者の所得と消費を増やす以外に経済を上向かせる方策はない」と評価。だが岸田首相は6月に決めた経済財政運営指針「骨太方針」で、貯蓄から株式や投資信託などの投資へ導く「資産所得倍増プラン」を新たに打ち出した。低所得者層を含めた格差是正から方針が大きく変わったように見える。藻谷氏は「若者や中間層にはそもそも投資に回せるお金がない。賃上げこそが重要だ」と訴えた。