集計方法変更、感染者激減 接種効果、結果的水増し? 新型コロナワクチン統計
厚生労働省が新型コロナウイルスワクチン接種回数別の感染者数の集計方法を変更したところ、未接種の感染者数が激減した。ワクチンの効果を高く見せるため「意図的に未接種に多く計上していたのでは」と疑う声を厚労省は否定するが、効果が結果的に水増しされていたと受け止められかねず、後藤茂之厚労相は「説明が不十分だった」と謝罪した。
▽逆転
厚労省は感染者情報を入力する政府の情報共有システム「HER―SYS(ハーシス)」のデータを基にこの統計をまとめて定期的に公表。接種の有無や回数、接種歴不明との入力がない場合は未接種に計上していたが、5月以降の公表分から接種歴不明に含めるようにした。同じデータに基づく国立感染症研究所の資料と数え方をそろえたと説明している。
変更前最後の集計期間となった4月4~10日と変更後最初の同11~17日を比べると、全ての年代で未接種の10万人当たりの新規感染者数が減少。20代では約766人から約353人、30代では約582人から約263人になった。40代や60代では2回接種済みの方が未接種より感染者数が多くなる「逆転」も生じた。
変更前は未接種の感染者数が接種済みの人を大きく上回っていたことから、一部自治体はホームページなどでワクチンの感染予防効果を示す統計として使用。厚労省専門家組織なども接種により感染が減る傾向を示していると説明していた。
▽ため息
西日本のある自治体は4月下旬、この統計を基に棒グラフを作り、ワクチンの効果を表すデータとしてホームページに掲載した。「視覚的に分かりやすいと思った」と担当者は話す。
だが集計方法の変更が明らかになった5月以降、以前は厚労省がワクチン効果を高く見せるために「意図的に未接種者を水増しし、統計を改ざんしたのではないか」との指摘がインターネット上で相次ぎ、国会でも話題に上った。この自治体にも5月下旬に「国が数え方を変えたのになぜ掲載を続けるのか」と外部から指摘があり、掲載をやめた。集計方法の変更は統計の欄外に小さく書かれていただけだった。
「国がデータを改ざんしたとは思わないが、詳しい説明がないと恣意(しい)的だと言われても仕方がない。ワクチン関連のデータだけに、もう少し丁寧に公表してほしかった」。担当者はため息交じりに話す。
▽慎重
厚労省は、この統計の目的はワクチンの感染予防効果を示すことではなく、接種後の「ブレークスルー感染」の状況把握だと釈明する。
データの扱いへの不信感は続き、今月7日の記者会見では「問題はない」と話した後藤厚労相も14日に一転、「(統計の)解釈の留意点などを十分に説明できていなかった。国民に率直におわびしたい」と謝罪した。
元厚労官僚の中野雅至(なかの・まさし)神戸学院大教授(行政学)は、慢性的な人員不足により仕事量が多い厚労省の負担を推し量った上で「ワクチンに関する意見はただでさえ分断しがちなので、適切な計上方法や変更時の説明をより慎重に検討することはできた」と指摘している。