書籍の取材

2024-06-18 16:54:29 | アート・デザイン・建築


少し前のことになりますが、書籍の取材で2軒の住宅を訪れました。
5月の気持ちのよい日の撮影取材となりました。
新緑の庭を通して窓越しに入ってくる光は、室内の壁をほのかに緑に染めています。
窓辺に置かれた家具や小物が、その質感を美しく見せてくれていました。



たんなる日常の光景だけれども、じんわりと趣きをもって感じられることが、本当にかけがえのない素敵なことだなと思います。
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ジョットの家

2023-10-15 22:23:00 | アート・デザイン・建築


絵のなかに描かれた建物に惹かれることがあります。
そのひとつがこれ。ジョットの絵のなかの建物です。
ジョット・ディ・ポンドーネは、ルネサンス絵画の礎を築いた画家として有名ですが、絵の背景に描かれる自然や街並みに、不思議な魅力があるのです。

簡素な箱の組み合わせのような外観に、大小の窓が開けられています。
平屋建てなのか2階建てなのかははっきりわかりませんが(まあ、適当なんでしょうね 笑)、正面の大きな窓はきっととっても大きなサイズなのでしょう。
その窓の先にはシンボリックな木が植わり、斜面から風景が一望できそうな雰囲気です。
室内の様子はよくわかりませんが、壁の渋い色といい、気持ちよさそうな窓辺がありそうな雰囲気といい、そして赤い屋根の塔の可愛らしさといったら!

可愛いらしいといえば、ルネサンスよりも前の時代の宗教画は、人物の個性や感情を表現するということはありませんでした。
ジョットが、人間本来の個性や感情を絵に表したという点でも画期的なのです。



母子像の絵画。優しいマリア様のお顔と、ほら、牛たちも微笑んで。
平明で簡素で優しい絵。

絵画に限らず、ですが、そんな気分をもつものが、ぼくは大好きです。
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Peter Zumthorのペッパーミル

2023-08-05 23:03:07 | アート・デザイン・建築


ずっと大切に使い続けているペッパーミルがあります。
スイスの建築家Peter Zumthorがデザインしたもので、ALESSI社から販売されていました。
今はもう廃盤になってしまったようです。

ペッパーミルといえば、テーブルの脇に他のスパイス類と行儀よく並んでいるようなイメージで、決して主役キャラクターではないはずなのですが・・・
このペッパーミルの存在感はものすごいんです。なにしろ高さは30センチほどあります。
ボディ部分はブラックウォルナット材を削り出してつくられていて、ひとつながりの曲面ラインの途中を一刀両断し、そこが回転するようになっています。
もともとはこういう木目のつながりだったのね、と合わせてみる楽しみもあったり。



胡椒の実は金属部分のネジを外して入れます。その動きがメカニカルでカッコイイ!
だんだんと味の出てくるウォルナット材のボディと、いつまでもギラリと輝くメタル部分の組み合わせが妙。

見て触れて使う楽しみに溢れた道具。そんな相棒のような道具は素敵ですね。
どんな料理にも、ちょっと胡椒を一振りかけたくなってしまいます(笑)
これからもずっと愛用するよ~
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岸辺のふたり

2023-07-13 21:33:37 | アート・デザイン・建築


「岸辺のふたり」というアニメーション映画があります。
わずか8分の短いストーリー。
とある娘と父の、別れと奇跡。

2001年にこの作品が発表されたときには、あらゆる映画賞を受賞したそうです。
ぼくはこの作品の印象的なワンカットを見ただけで心を鷲掴みにされました(笑)
余白を活かした極めてシンプルながらも深い味わいのある絵づくり。

この映画の監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット氏は、次のように話しています。

人間のなかにある、「密やかだけれども強い願い」というものが、途方もなく美しい。
それがシンプルな映像とストーリーに凝縮され、得も言われぬ余韻をもたらす映画になっています。

時折「構えて」観たくなる作品です。


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記憶のなかの教会

2023-07-08 23:21:28 | アート・デザイン・建築


ぼくが幼少期に通った幼稚園は、ちいさなカトリック教会に併設されていました。
併設というよりも、教会そのものが園舎になっていて、ちいさいながらも教会然としたその佇まいは、幼少期の心にもしっかり留まり、今現在も記憶のなかに漂っています。

三角の屋根と、その上に掲げられた十字架。
門扉から奥に見え隠れするアーチ型のエントランス。
教会堂の高い天井。
白い壁と、とっぷりと黒光りする床板。
ステンドグラスから差し込む色とりどりの光。

幼少期に過ごした家のことはいろいろと覚えているけれども、それ以上に、3年間過ごしただけの教会の記憶が鮮明なのは、なぜなのでしょう。
自分自身が落ち着くと思える空間の原風景は、そこにあるのかもしれません。

家を設計するときに、お施主さんの記憶のなかを覗き見ることはできないけれども、お施主さんのなかに潜在的に宿る記憶の断片を引き出せたら、と思わずにいられません。
かっこいいかたちを創り出すのではなく、記憶のなかに宿る安心のかたちを見出したい、というところでしょうか。

上の写真は、ローマのとある小さな教会です。
大きすぎず、包まれるような優しい雰囲気の空間でした。
この教会を訪れてしばらく身を置いてみたときに、ぼくが過ごした幼稚園の空間と、どこか似ているなあと思いました。
無名の教会ですが、ぼくにとってはこういう空間に大切なヒントが隠されているように思うのです。
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