大きな屋根のある家

2014-02-17 11:01:35 | 進行中プロジェクト

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木造住宅の魅力のひとつとして、屋根を美しく掛ける、ということがあると思います。モダン和風の住宅設計の名手だった吉田五十八は、「100坪の屋根の掛け方をうまくまとめられないようじゃ、1人前の建築家とはいえないよ」と話していたそうですが、それだけ、大きな屋根の掛け方には難しさも伴う、ということでしょう。

埼玉県川口市で建設がすすんでいるこの住宅は、100坪の屋根、とまではいいませんが、しかしそれに近い大きな屋根のかかる住宅です。真四角の間取りではなく、数寄屋のように出っ張ったり引っ込んだり、複雑な間取りをしています。そこに、単純な切妻型の屋根を掛けました。屋根の形はシンプルだけれども、その下にある間取りと構造材との関係を整理して設計するのは、とても苦労をしましたし、それ以上に、構造設計者にも工事関係者にもご苦労をおかけしました。

頑張った痕跡が見えなくなることは、寂しくもありますが、その分、できあがった姿が凛とした雰囲気を宿してくれることを期待してもいます。

屋根は壁面から大きく張出し、下にはゆったりとした軒下の空間が生まれています。屋根の魅力は、屋根面そのものよりも、軒下の空間にあるようにも思います。その魅力を損なわないよう、軒先の処理や換気口の付け方などにも、工夫が必要になります。

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大切なのは、そうした大きな屋根に守られた室内が、いかに居心地よくあるかということです。いつもの設計のように、部屋の内と外のつながり方にしっとりとした奥行きが感じられるように、窓の作り方に工夫をしています。和室の窓からは、既存のモチの木がよく見えます。

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敷地内に、かつて大きなケヤキの木がありました。そのケヤキを使って、室内の主要な家具を作ります。既存の木を活かすことや、ケヤキの家具を作ること。それらを出発点として家のデザインや材料も決まっていきました。全体が先にあって、後から部分を考えるのではなく、部分から始まって全体が決まっていくというプロセスには、独特の面白さがあります。

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冬の庭

2014-02-03 20:54:53 | 日々

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職住一体の生活をしている私は、1階の事務所から2階の住居へ行き来するとき、いったん外に出て、庭を通ってまた別玄関から入り直す、ということが習慣になっています。ずっと室内で根を詰めて仕事をしていてもよくないでしょうから、外の空気をすって、庭を通るほんの少しの時間が、ちょっとしたリフレッシュにもなります。

庭の日頃の手入れは、近所の女性の植木屋さんが合間をみつけては手際よくやっていってくれます。こちらからいつ来てください、ということもほとんどないし、向こうから、いつ行きますよ、というのもなく。

留守にしていて挨拶もできないときもあれば、在宅していたのに気付かないことだってあるぐらい(笑)

それでも、あ、来てくれたんだ、とすぐにわかるのは、少しさっぱり、ぱりっとした雰囲気に庭がなっていることと、ちょっとしたサインがあるからです。

イングリッシュガーデン風の、少し野趣のある庭のそのなかに、鉄製のバードバスがあります。そこに水がはられ、庭で採れたなにかの草花が活けてあります。今日は昼食時に庭を通ったとき、この写真の光景に出会いました。何が活けてあるかも、一期一会。だからとても新鮮な印象です。

植木屋さん。

造園家。

庭師。

ガーデナー。

どれも同じ職業を指すようでありながら、なにかニュアンスが違う。それだけ、仕事の内容に幅があるということでしょう。

建築。

建物。

家。

これもそれぞれニュアンスが違う。私がふだん仕事として手がけているのは、やはり家というのがしっくりくるような気がします。講師を務めている学校で、「建築というのは・・・」という出だしで話をするのは、なにか自分の心に反して構えすぎているような気になるときがあります。

家と庭。

そんなシンプルで柔らかい言葉で表現される空気感を大切にしたいなあと思います。

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