オノ・デザインで設計をしてきた「富士の二つの家」が、地鎮祭を迎えました。更地になった敷地に張られた地縄の位置を確認し、家の大きさや間合いをあらためて感じました。想像とズレはなかったけれど、いつもながら、設計の内容を反芻するちょっとした緊張感もあります。
地鎮祭。
敷地に面する幹線道路の騒音。信号が変わるときにおとずれる一瞬の静寂。
風の音。
響く神主さんの声。
皆の視線が向かう方角は、富士。
山の神が降りてきて、守られるような、そんな心地になりました。無事に工事が進み、家が完成しますように。
富士の膝元にゆったりと広がる、野の家。二つの家は隣り合って並びながらも、中庭を囲むコートハウスのような佇まいになっています。中庭は雑木の庭になるようなイメージ。そこを縫うようにデッキで二つの家がつながれています。富士山につながっていく広がりのある光景とはいえ、幹線道路に面した敷地。そのなかに、親密な雰囲気の空間をつくりたいと思いました。
古くは地元新聞社の社屋があった由緒ある場所。そういった「時間の厚み」を受け継ぐよう、年月を経るごとに陰影を豊かにしていく光景を思い描いてきました。この敷地に面する交差点を行き交う人々の心に、「場所の記憶」としてしっかりのこっていくような。そんな住宅を、富士の地元の材料を使ってしっかりと造っていきたいと思います。