「古木のある家」より。
カーペット敷のウォークインクローゼットから廊下に出ると、ほの暗い空間にヘリンボーン張りの床が黒光りしています。
古い庭木をなるべく残して建て替えたい、そんなご要望から始まった家だから、打ち合わせを重ねるうちに、全体的にクラシックというか、古色ある気分に包まれた家になりました。
小ぶりなサイズのヘリンボーン用のフローリングを、大工さんがひとつずつ丁寧に組んでいきます。角度が合わなくなるときれいに張れないので、大工さんの腕が肝要になります。
コツコツコツ・・・と音を響かせながら、大工さんが黙々と作業を続けていたのを思い出します。
新築の家だけれども、以前からずっと在り続けたような佇まい。
新しくもあるし、古くもある。
個性的でもあるし、凡庸でもある。
昔に読んだ、画家・有元利夫への評で、暗闇があると同時に光が溢れ出す不思議さ、というようなことが書いてありました。
切れ味よい言葉で表現されるコンセプトから遠く離れて、あらゆるものが同時に在ることををきちんと表現できたらいいな、と思います。