くるみの床板

2024-02-26 19:53:59 | 北茨城の家


週末は「北茨城の家」の設計打合せへ。
この家は、古くからある納屋を建て替えて住宅にするのですが、納屋に使われている古材を再利用しながらつくっていく予定です。
色が渋くくすんだ古材の存在感を引き立て、呼応するような床や壁のあり方について、話し合いました。

こんなものを作ってみたんです。

そう言いながら施主のMさんが見せてくださったのは、ご自身で制作した床フローリングのサンプルでした。
Mさんは額装作家で、普段から木材と身近に接していらっしゃいます。

くるみは程よい硬さがあって、音の響きがいいんですよね。

そんなお話を聞きながら、Mさんが普段からいかに木材の個性に向き合いながら仕事をされているかが滲み出ているように感じました。
北海道産のくるみの木は、ほどよく粗野なところがとても魅力的で、光の当たり方によって黄金色に輝きます。
なんという存在感!
ぼくは見た瞬間に心を奪われました。
この床板であれば、古材と美しく調和するはずです。
この家の床板は、Mさんがご自身で材料を挽いてつくってくださることになりました。

壁の左官塗り材や家具用の造作材などのサンプルと並べてみながら、これからできあがる空間に思いを馳せました。
写真家でもあるMさんのために、自然光の入り方が印象的なフォトスタジオ、のような階段室もあります。

納屋に使われている大谷石を、室内の壁に再利用します。
大谷石は熱に強いのが特徴で、それを活かして薪ストーブの台座や防熱壁にも用いることになりそうです。

くるみの床板サンプルをいただいて帰ってきました。
確かな存在感のある素材を手元に置いておくだけで、なんだか心がウキウキします(笑)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

左官塗りの音

2024-02-17 23:02:49 | 陶芸家の家


「陶芸家の家」をひさしぶりに訪問しました。
この家は壁と天井がすべて左官塗りになっていて、その質感を活かすように、天井がゆったりとした円弧を描いたカタチになっています。
左官塗り特有のザラついた質感によって、室内は自然光と陰影が独特の雰囲気になります。



工事中、左官職人さんがこの円弧を塗るところをしばらく見学していました。
ざらざらざら、ざらざらざら・・・
静かな現場のなかで、左官コテを動かすたびに室内に響く音が印象的でした。

できあがって何年経っても、何度見ても、この質感は美しいなと思います。
見ていると、心が落ち着くような。
とてもシンプルなカタチだけれども、とても余韻のある空間になりました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

茶室を楽しむ

2024-02-11 22:49:42 | 鎌倉小町の家


「鎌倉小町の家」は、裏千家茶道の稽古の場としても使えるように設計した家です。
茶室の設計にはさまざまな決まり事があり、その規範から外れないように注意深く設計しなければいけません。

この家の茶室は、京畳の八畳和室ですが、炉がふたつあり、そのうちのひとつは、2月の一か月間だけ使用する「大炉」になっています。
そのほか、本来は小さな茶室に設けられる「にじり口」も備わります。

せっかくだから、いろんなお稽古に使えるほうがいいでしょ。

そんなふうに朗らかに話される施主のKさんのお人柄に合った、明るく居心地のよい茶室にしたいなあと思いながら設計をしました。

あんまり堅苦しいと、みんな疲れちゃうでしょう。

ホント、その通りですよね。
だから、間取りをあれこれ工夫しながら庭を捻出し、南庭に面した明るい部屋になりました。
床柱は優しい風合いの北山杉の絞り丸太。新木場まで施主と一緒に材料を選びに行きました。
施主とのやりとり、大工さんとのやりとり。いろいろな思い出がギュッとつまっています。

凛とした雰囲気でありながらも、居心地の良さがある。
そんな茶室を目指してあれこれ考えて設計する時間も楽しいものでした。
茶道も突き詰めれば自由なものといいますが、建築家にとっては茶室の設計も自由で楽しいものだなと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

梅園が見える窓

2024-02-04 21:47:06 | 練馬 梅園の家


家のなかにひとつ、「重心のある居場所」というようなものをつくりたいと思います。
いわば、家のなかの特等席のようなところですね。
練馬区の住宅街のなかで建てたこの家では、リビングの一番奥にある出窓ベンチコーナーが、そんな場所です。

道路の向こう側に梅園が望めました。梅園を切り取るようにして、大きな出窓をつくり、座ったり、ものを飾ったりできるベンチが備わっています。
こういう場所があると、なにかここに吸い寄せられるような雰囲気になるから不思議です。



写真はキッチンのなかから見通したところ。
窓の向こうには淡い色の満開の梅。
そんな梅の風情と調和し美しく風景を切り取るように、グレーがかった色の壁は余白を多く、そして窓枠は優しい木の色をそのまま活かしました。

今年の東京の冬は暖かく、梅が早く咲きはじめました。
明日の雪と寒さで、いったん足踏みをするのでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする